お店の方は、皆日本語がベラベラ、敬語も営業用語もバッチリである。見ず知らずの我々に、チャイの飲み方をレクチャーしてくれたり、わざわざ注いでくれたりと、いろいろと世話を焼いてくれる。彼らの日本語は、日本の偏差値55以上の大学に留学して、少なくとも5~6年日本語を学んだ人々よりもレベルが高い。相当熱心に学んでいるのがわかる。筆者は日本の外資でも働いてきたが、外資系企業でも、ここまで日本語ができる人は意外といないのだ。
肝心のケバブは肉が新鮮で大変質が良い。トルコの平たい自家製パンは焼きたてで、かなり良い粉を使っていた。このパンは、レシピにイースト菌や砂糖、粉ミルクを使わないため、素材の味がすぐにバレてしまうのだ。筆者の親戚は一時期、パン屋をしていたので、少し食べれば粉の質がわかる。
お店の方と雑談すると、味付けや製法は現地式を守るのがこだわりで、美味しさと手頃さを両立したという。セントラルキッチンだらけの日本の飲食店では見かけなくなった丁寧な手作りで、一切妥協せず、手を抜かない。味にうるさい日本人との真剣勝負…。この味なら、地元で繁盛しているのも納得だ。
八百屋の老人に話を聞くと
駅前からさらに移動し、クルド人の住民が多いとされるエリアにも向かった。そこは、赤ん坊のいるクルド人の若い奥さんがベビーカーを押して数名歩いている程度で、大量にいるわけではない。しかも彼女たちは、その辺の日本人と変わらないオシャレな服装で、すれ違い様には、はにかんだ笑顔で会釈をしてくれたのだ。
こちらも子どもを連れていたからだろうが、おそらく出身地でも年長の人や、道ですれ違った人に会釈する習慣があるのだろう。
その後、地元の八百屋で買い物をしていた若い母親に話しかけると、カタコトの日本語で恥ずかしそうに受け答えをしてくれる。筆者は欧州で態度のデカい外国人移民に慣れているので、彼女の素朴さにも驚かされた。
地元で、長年八百屋をやっているお年寄りに話を聞くと「そうねえ~。たしかにクルド人は住んでいるけど、日本語はできるようでできないかな。でもなんとかやってるね。困ったことは、そうねえ…野菜を触っていくことぐらいかな。あとは特にないかね」と拍子抜けする答えが返ってきた。