自公はこれまで日常的に情報交換し、落としどころを作る強固なパイプがあった。2009年に野党に転落した際には、自民党の大島理森元幹事長と公明党の漆原良夫元国対委員長。政権復帰後は自公で政策的なズレが生じると太田昭宏元国交相(公)が安倍晋三元首相(自)と膝詰めで話した。直近では菅義偉前首相(自)と学会の佐藤浩副会長も関係は深い。
「菅さんが中枢にいた時期まではあった自民党との強いつながりが、今はもうない。昨年の参院選、また次期総選挙へ向けても選挙協力について調整がつかず、東京などでは長く揉めた。いまの自公の幹事長では困難だ。うちが世代交代と裏のパイプ役を育てられていないという反省もある。人材を育てないといけない」(前出ベテラン議員)
政権運営で平和という理念が足かせに
人的な問題だけではない。政策や理念の問題もある。ここには池田氏の死去が関わってくる。
「公明党は立党以来『平和と人権』の政党であるという理念を持っています。池田名誉会長の作った理念です。池田氏がいなくなった今後、公明党が公明党であるべき価値として、その理念を貫けるかどうかが課題です。具体的には、世界各地の戦争や中国による台湾有事の可能性など、安全保障論議が政治の中心テーマになる時にうちはどうするのか。平和こそ池田氏が説いてきたこと。学会員の多くが自民党の保守的な政策には反発している。安保法制などは、創価学会婦人部を中心に反発が出て、各地で創価学会旗の『三色旗』を手にした学会員が反対運動に参加した。平和という最大の理念は、今後も公明党の政治的な行動原理の基本になるのだが……」(別のベテラン議員)
それが、逆に足かせになるとも話す。
「今後、政権運営など政局になると、場面場面で安全保障や憲法改正など現実対応を迫られる。池田名誉会長が生きていれば、怖がらず自民党と喧嘩できるがもういない。平和を貫けるか、妥協するのかなど難しい判断も出てくる」(同別のベテラン議員)
学会と公明党――。今後、政治活動の中身そのものがどこへ向かうのか。池田氏亡き後、当面は乗り越えても、その先に待つのは体制の立て直しなど大きな岐路かもしれない。
取材・文/村嶋雄人
写真/Wikipedeiaより(撮影/Noukei314)
初出/実話BUNKAタブー2024年2月号