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宝塚のパワハラといじめ:ロマン優光連載284

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284回 宝塚のパワハラといじめ

昨年におきた宝塚歌劇団宙組の劇団員Aさんの自死に関する問題について、遺族側、歌劇団側双方が28日に記者会見を開き、合意書の調印が行われたこと、遺族側が主張している死亡した劇団員に対して行われた15件のパワハラ行為のうち14件を歌劇団側が認めたこと、 パワハラの加害者とされる10人のうちの宙組の上級生・演出家・プロデューサーら6人が歌劇団側の代理人を通じて遺族に謝罪文を提出したこと、歌劇団の親会社である阪急HDの角和夫会長が調印の場に出席し遺族に謝罪したことが報告され、歌劇団側は遺族側に対して全面的に謝罪した。

昨年2月に「2021年、Aさんが断っているのにかかわらず上級生がAさんの髪の毛のセットを行い、額にヘアアイロンを押しつけて、一ヶ月痕が残るような火傷を負わせるといういじめがあった」という記事を週刊文春が掲載され、劇団側はHP内で「事実無根」であると発表した。

その年の9月、Aさんが自宅マンションの敷地内で倒れた状態で亡くなっているのが発見され、警察は自殺であるとみなした。このことが報道されると、当時の木場健之理事長は10月に外部弁護士による調査チーム(調査依頼した法律事務所に所属する弁護士の一人が阪急阪神百貨店の親会社社外取締役であることが報道され、一部で疑問の声もでた)を立ち上げたと発表し、文春の記事については「いじめの事実はなかったと認識している」と内容を否定。

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約1カ月後の11月10日、遺族側代理人が都内で記者会見をし、死亡に至った原因は月250時間を超える時間外労働や上級生のパワーハラスメントにあったとして、歌劇団に謝罪と補償を求めた。

その4日後に調査報告書の結果が発表されたが、過重労働に関する管理責任は認めたものの、上級生によるパワハラやいじめについては否定するものだった(パワハラ・いじめ加害者とされるうちの4人の上級生がヒアリングを拒否していたこと、その事実が報告されていなかったことが発覚。調査の妥当性が疑問視された)。その際、村上浩爾・現理事長(当時・専務理事)は(パワハラの)「証拠となるものをお見せいただきたい」と発言。遺族側代理人は同日に会見を開き、歌劇団側のこういった発言を批判し、再検証を求めた。

その後、両者代理人が面談を始め、交渉が続き、今回の合意に至ることになった。

その間にも、遺族側の主張を裏付けるような現役劇団員や元劇団員の証言が記事になったり、現役劇団員であるAさんの妹による「宝塚歌劇団は、日常的にパワハラをしている人が当たり前にいる世界です。その世界に今まで在籍してきた私から見ても、姉が受けたパワハラの内容は、そんなレベルとは比べものにならない悪質で強烈に酷い行為です」「劇団は今に至ってもなお、パワハラをおこなった者の言い分のみを聞き、第三者の証言を無視しているのは納得がいきません」「姉の命の重さを何だと思っているのでしょうか」といった文言を含む訴えを遺族側代理人が公開するようなこともあった。

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Aさんの死を受けて宙組の劇団員らが劇団に労働環境の是正を求める意見書を提出していたが、 意見書の存在は歌劇団の記者会見では触れられず、 また調査チームに意見書の内容も報告されていなかったことも発覚。理由は「この会見は女性の死亡に関するものであり、意見書とは別問題だ」ということだが、別問題というのは無理ではないか。

「悪意があったものとまでは言えない」?

宝塚歌劇団側の対応には疑問がわく箇所もあるが、合意に至ったことは良かったと考えるべきかもしれない。しかし、パワハラの加害当事者に「悪意があったものとまでは言えないと感じている」という歌劇団側の見解には疑問を感じる。

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