報道後、バーベキューというワードにある種の「匂い」を感じたネット民が調べてみると、案の定予感は大的中。被害者の大脇さんは、墓地でサンマを焼いて食べたり、消音器を抜いた違法改造バイクを乗り回したりと、なかなかなヤンチャぶり。騒音トラブルで警察沙汰になるのも、事件のときだけではなかったとか。
これらの情報が拡散されるや、痛ましい殺人事件を痛快なエピソードとして楽しむネチズンたち。自分と真反対の楽しそうな人が酷い目に遭ったと聞き、自然と口元が緩んでしまうのも分からなくはない。しかし、一度注意されたのに止めなかったというのを免罪符に、彼が殺されるのは社会にとって良いことと喜ぶのは人としていかがなものか。それにバーベキューをするのは、迷惑行為かもしれないが、違法行為ではない。バーベキューをしただけで殺されるなんて、あんまりだ。どうせ、陽キャを叩いているのは、バーベキューする友達もいない、チー牛の陰キャである。
17年3月、北陸新幹線の線路上で轢死した撮り鉄。撮影の邪魔となる駅員や利用者に罵声を浴びせたり、線路側に乗り出して危険な撮影をする撮り鉄に、同情を抱きづらいとする声が多く寄せられた。線路内に入ると危険。そんなことすら、教わってこなかったのかというわけだ。
これまでの行動から察するに、撮り鉄は義務教育を受けられなかったのかもしれない。駅での妨害行為でダイヤを乱し、社会に迷惑をかけるだけの存在なのかもしれない。 だが、そんな皆んなから嫌われている撮り鉄に、安全圏から石を投げつける行為は醜いことこの上ない。撮り鉄を批判しても、自分にブーメランが返ってくることはないと思っているのだ。そんな卑怯な奴らは、撮り鉄以上に嫌われてしかるべきだ。
20年6月、東京世田谷区の路上でワゴン車にはねられ死んだ5歳児。スケボーに腹ばいになって坂を下っていたところ、車の死角に入り轢かれた。「運転手は避けようがない! 5歳児のテロ行為だ」と男児に批判が集まったが、まだ5歳である。右も左もわからなくて当然だ。それに、この事件は運転手が不起訴になっているから、もう許してやれ。不幸な幼稚園児を真剣に叩いている人、現実社会ならドン引き級の言動だ。
15年1月、シリアにて過激派組織イスラム国(ISIL)に処刑された湯川遥菜(出生名、正行)さん。 高校卒業後、ミリタリーショップを開業。2号店もオープンさせ、常連客だった女性と結婚。幸せの絶頂にあった湯川さんだったが、その後、事業の拡大に失敗。
会社は倒産し、局部を切り落として自殺未遂を図り、妻も肺がんで亡くした。名前を改め、男装の女スパイとして知られる「川島芳子」の生まれ変わりを自称しはじめたのは、それからまもなくのことだ。14年1月、民間軍事会社を立ち上げた湯川さんは、同年4月にシリアへ渡るも武装組織によって拘束。このときはジャーナリストの後藤健二氏の尽力により解放されるが、懲りずに再びシリアへ。ISILに拘束されたのち、15年1月頃、処刑の執行を受けた。
多方面に迷惑がかかる可能性があるなかシリアへ渡った目的が、自身の軍事会社の実績作りだったこと、多額の税金を使って解放されたのに、再びシリアで捕まったこと、湯川さんの存在自体が奇異だったことなどから、ネット上では追悼どころか大バッシングが噴出。 「自殺するなら、切るべきはチンコじゃなくて手首ですよ」「ミリタリーショップを経営したぐらいじゃ、本物の戦場ではクソの役にも立ちませんよ」……っていくら湯川さんの性別不明な見た目が異様で、キモいミリオタでだからって、言っていいことと悪いことがある。湯川さんはジャーナリズムに殉じただけなのだ。死人に口なし。何を言っても反論されないと、正義感を振りかざして湯川さんを叩いていた人は、恥を知れ!
被害者に落ち度があろうとも、命を奪われるほどの悪行などあるわけない。自業自得、因果応報などと死人に鞭を打つみっともない人間にはなりたくないものだ。
写真/平沢俊乃さんのXより