乗っ取りされても即削除の謎
2021年10月31日、TBS系列にて放送された選挙特番『選挙の日2021』。スペシャルMCとして出演したお笑い芸人の太田光は、小選挙区で敗戦濃厚となった甘利明幹事長(当時)に対し、笑いながら言った。
「ご愁傷様でした」と。
この放送後、太田光の妻であり、事務所の社長でもある太田光代さんはツイッターにて「皆さまのご指摘。ご愁傷様についてです。この言葉。決して悪い言葉ではありません。ご愁傷様は、おきのどくさまです。です。漢字でもご理解いただけるように。ご愁傷様です。これは心の慮りのゆえです。(後略。原文ママ)」とつぶやき、さらに「アーリン(太田光のこと)に礼節など無理です。ただ、皆さんは礼儀正しく美しく。生きているのですか? そんな人は芸人出来ません。少なくとも馬鹿ですよ。芸人は。(中略)。馬鹿は褒め(原文ママ)」と太田光をフォローするツイートをした。
ところが翌々日の11月2日になると一変、「甘利さんに謝るようにします。政治家がそれを望むのか確認します」と謝罪の意向を示す投稿をしたのである。その夜、「『フォロワーの皆さまへ』。本日未明から、私のツイッターアカウントが乗っ取られていることが判明しました」とし、自身のツイートではないものはすべて消したと述べた。消えていたのは謝罪の意向を示すいくつかのツイート。
謝罪の言葉が上がった際、自民党サイドから何かしらの圧力があったのではないかと炎上騒ぎになったが、乗っ取られたのである。間違いなく、乗っ取られていたのである。なお、謝罪の意向を示すツイートがなされたのは深夜0時過ぎ。その約12時間後に光代氏は猫の写真を上げているのだが、乗っ取りツイートがあることに気付いていない。そのくらい巧みな乗っ取り犯に対して、「根源を追跡する」と、警察を介入させることなく、自ら解決しようとする辺りは、さすが一流芸能事務所の社長としか言いようがない。偉人である。
これに対してネット上で「切込隊長」と呼ばれている作家の山本一郎氏は「まさかの香山リカメソッド」と揶揄するツイートをしていたが太田光代氏にも香山リカ氏に対しても失礼だ!
遡って2015年。当時、生放送番組『虎ノ門ニュース8時入り!』(スカパー!プレミアム)の金曜パネリストをしていた、精神科医の香山リカ氏のツイッターに木曜パネリストの青山繁晴氏のことを「ホント下劣」と揶揄する投稿がなされた。さらに番組に対して「つまんない仕事だけど、6月までは続けようかと相談してます」との投稿も上がったのである。これが問題となると、香山氏はすかさず「私が書いたものではない」と明言! 乗っ取りの可能性も考えて調査中だと番組で述べた。
しかし投稿された内容に関係者しか知り得ない情報も含まれていたため、出演者やスタッフを集めて話し合いがもたれた。その場で香山氏は「問題のツイートは、ファンに向けて書いたダイレクトメールの下書きだった。それがいつの間にか投稿されてしまった」と説明。ファン向けのDMの下書き!?……何か間違いがあったら困る著名人なら当然下書きはする……かも。するとスタッフが「乗っ取りなら警察に届けるべきではないか」と指摘。香山氏は「乗っ取りではなく、ツイッターアプリの誤作動かもしれない。過去にも同じ誤作動が起きた」と述べた。「それならアプリの開発会社に問い合わせましょう」とスタッフ。「もしかしたらパソコンそのものが乗っ取られた可能性もあるから、調査しましょう」とさらなる提案をし、香山氏は改めて調査するとした。ところが後日送られてきたのは、番組を降板する旨の手紙だったのである。
決して、断じて、逃げたのではなく、これ以上、仲間同士で犯人捜しをするのは不毛と、自ら身を引いたとしか思えない。さすがは気遣いの精神科医としか言いようがない。偉人である。
誤操作、不具合で巧みに火消し
アプリの誤動作ではなく誤操作と言い張った立憲民主党の島田誠氏のツイート。 「ホームレスの命はどうでもいい」と発言したメンタリストのDaiGoのアカウント停止を求めるキャンペーンを引用し、「以下のキャンペーンに賛同をお願いします!」と投稿した。2021年、8月23日のこと。これが言論弾圧にあたるのではないかと炎上。すると島田氏は「私が意図して発信したものではありません。現在、出し入れ時の誤操作による場合もあるかもしれませんが、プロセスを確認中です(原文ママ)」と投稿したのである。
出し入れ時の誤操作!?……言葉の意味はわからないが、政治家の言うことに間違いはない! ちなみに固定ツイートになっていたが、それもこれもどう考えても誤操作。つまり自分の責任ではない。この危機回避能力の高さは、さすがは政治家。偉人である。
こちらは誤操作ではなく、完全なる乗っ取り。『ウマ娘』の音楽プロデューサーである保坂拓也氏のツイッターに同年の6月23日の夜23時頃、「たかみな、全裸にして目隠しして腕吊り上げて、全身舐め回してあげたい」との投稿がなされた。直後に削除されたが投稿画像が拡散されて大炎上。翌日の夜、保坂氏は「昨夜本アカウントにて身に覚えのない投稿がされ、直後に削除されました。(中略)今朝事態を把握しまして、アカウントのパスワードを変更、当該ツイートにて名前を出された方、所属事務所の俳協様へもご相談の上で原因の究明と対策を行っております」とした。乗っ取り犯が即座に削除した投稿の内容を完全に把握し、たかみなを元AKBの高橋みなみではなく、俳協所属の声優・高橋ミナミだと判断する辺り、さすがは売れっ子音楽プロデューサー。偉人である。