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松浦大悟が解説する東京レインボープライドが炙り出したLGBT運動の矛盾

社会
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意見が真っ二つに分かれた緊縛ショー

さて、今年最も炎上したのが緊縛ショーである。

露出の多い服装で縄に縛られ吊るされた男性の写真が瞬く間にSNSで拡散され、批判の嵐が吹き荒れたのだった。「子どももいる場所で見せるのは性的虐待」「多様性を盾にしたら何でもあり?」といった意見に対し、主催者は公式ホームページで「TRP2024における『過度な露出や過激な表現』のご指摘について」と題した声明を発表した。

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「歴史を通して、LGBTQ+コミュニティは、過激に性的な存在であるというスティグマや差別と闘ってきました。その中で、偏見からの解放の形として、あえて性的にみえる表現や既存のジェンダーステレオタイプを利用して社会規範に挑戦し、ジェンダーと性の自由を提唱してきたこと、それに関してLGBTQ+コミュニティの中でもさまざまな意見や見解があるという背景を認識することは極めて重要だと考えています」

声明文には続けて、スタッフがすぐに出展者を注意し、今後はやらないようお願いをした旨が書いてあったものの、謝罪の言葉はなかった。

LGBT当事者の意見は真っ二つに割れ、大激論となった。「同じLGBTとして迷惑」「LGBTは甘えるな」といった声が飛び交った。

報道されないLGBT運動における対立軸

マスコミはLGBTの綺麗な部分しか伝えないので、なぜ当事者が分裂しているのか一般の人にはわからないだろう。まず押さえておかなければならないのは、LGBT運動における二つの潮流についてだ。つまり、ホモファイル運動VSゲイリベレーションである。1950年代のホモファイル運動(マタシン協会、ビリティスの娘たち)は既存の社会制度を脅かさない戦略をとっていた。常識人として振る舞わなければ話を聞いてもらうことすらできないからだ。

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だが、警察が踏み込んできたストーンウォール・イン事件を経て、「紳士的に振る舞っていたのでは社会は変わらない」と攻撃的なゲイリベレーションが台頭するようになっていった。激しい抗議活動は、90年代には新・南北戦争といわれた。

映画『X-MEN』に登場するプロフェッサーXとマグニートーの対立は、こうした二つのLGBT運動のメタファだといわれている。

「LGBTといえども社会の成員の1人。“社会”というプラットフォームを壊すのではなく対話を通じて信頼を高め、性的秩序を微調整していく」というのがプロフェッサーX(=ホモファイル運動)。「自分たちを受け入れない社会は破壊してしまえ」というのがマグニートー(=ゲイリベレーション)だ。

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