『なぜ働いていると〜』の主張は、こうだ。「本が読めない状況とは、新しい文脈をつくる余裕がない」「自分から離れたところにある文脈を、ノイズだと思ってしまう」「そのノイズを頭に入れる余裕がない」だから、仕事以外の文脈を取り入れる余裕を持つために、「半身」で働くことを推奨しているというわけ。この「半身」とは、上野千鶴子が全身全霊で働く男性に対して、女性の働き方を「半身で関わる」と表現したことから来ている。著者の三宅さんは、男女ともに半身で働くべきだと提唱しているのだ。
でも僕としては、「半身で働こう」というのは、ある種無責任だとは思った。日本が資本主義社会である以上、そういう生き方で幸せになるほど世の中甘くないんじゃないかなって気もしなくはない。
僕が流行らせた本を自己啓発本と括り、それに疲れた若者に「人生、仕事だけがすべてじゃないよ」みたいに諭すのも、ある種自己啓発。目の前の事態は何も変わってないのに、本を読んだだけで変わった気がするのは、自己啓発の本質じゃないかな。
とはいえ、この『働いてると〜』というタイトルが持つメッセージ性が流行るということは、新自由主義的な、儲れば偉いみたいな考えに対する反発がいまだ根強いんだなと実感した。この前の選挙で、乙武さんが負けたのもそう。マッチョイズムが嫌われる現象は、一過性なものじゃなくて、根本的なものと気づかせてくれたことに感謝。
この本を読んだ後、SNSで僕が「(著者の三宅香帆と)対談したい」と呟いたら、一瞬で担当編集からオファーが来た。この編集は『ファスト教養』(レジー・集英社)という、インフルエンサーをめっちゃ批判している新書も担当してて、彼が大学生の時にNewsPicksとか僕が関わった本とかが全盛だったみたいなんだ。もう僕に物申したくて仕方ないんじゃない? 僕よりも仕事を頑張ってて、全然「半身」じゃないよね(笑)。
実は、僕は自分と反対サイドの人と話すことはけっこう好き。今度、速水健朗さんとも対談をするしね。僕のことを揶揄しているカルチャーな人と話す機会が増えて嬉しい限り。でも、水道橋博士さんは、絡みにくいから苦手かな。
為末大のジェンダー炎上
5月18日に、為末大さんがX上で「50歳以降で多様性理解のために一番おすすめなのは『20歳以上下の異性の友達を作る』だと思っています」と呟いたら凍結されたわけだけど、これ完全にAI的なものがミスって凍結させてしまったのだとばかり思っていたら、本気で怒ってる人が多いんだね。意外とちゃんと炎上していた(笑)。