「高校3年間、男子バレー部のマネージャーだったのが大きいのかなと。高校の運動部の部室って、汗臭さと制汗剤のニオイが混ざって大概かなり臭いじゃないですか。とくにシューズなんか、酸っぱいニオイも混じってるし。マネージャーになりたての頃は私もまだその臭さに耐えかねてたんですけど、やっぱり人間慣れていくもので、だんだん部室の臭さは気にならなくなっていきました。で、大人になったらあの部室レベルで臭い部屋に巡り合うことってまずないし、懐かしさも相まって『あのニオイの刺激、またどこかで得られないかな……』と考えることが増えた結果、あらゆるニオイものに関心を示すようになっちゃって(笑)」
たしかに、あのいろんなニオイが籠もったモワモワした空間には、もう戻れない気はします。病みつきになっちゃったんですね。
「もうひとつ、大きな理由は父親ですね」
どういうことですか?
「家族構成は父・母・兄・私なんですけど、私以外は皆ちょっと不仲というか、私を通してじゃないと会話が成立しないような家庭だったんです。私はひとり、ムードメーカー的な立場で仲を取り持つのを頑張ってきたんですけど、たまに、私の努力って意味があるのかなって悩んでしまうことが多くて。で、そういう不安になったときには家族みんなの枕を嗅ぎにいって、安心感を得ようとする癖が幼少期からあったんですよね。しかも、なぜか3人のなかで最も臭かった、父親の枕が一番のお気に入りで。反抗期のとき以外はかなりの頻度で嗅ぎ回ってました」
愛娘に枕のニオイを嗅がれるなんて、お父さん幸せ者ですね。
「本人は嫌がってて、いまは私が帰省するたびに枕を隠したりしてきますけどね(笑)。そういうときは、代わりにお父さんにハグして耳の裏や足の激臭を直で嗅ぎにいって、余計に逃げられたりもしてます。 たぶん、私みたいにニオイから安心感を得るタイプのコってある程度いる気はするし、とくにお父さんとの仲がある程度いい、要はファザコンのコとかなら、同意してくれるんじゃないかなと……。そのニオイを嗅ぐたびに、『私はこのお父さんから愛されて育ってきたんだ』って思えるので、社会人になってからもやっぱり定期的に嗅ぎたいんです」
なるほど。そのお父さんのニオイを本当は毎日嗅ぎたいけど、実家を離れるとそれは難しいから、ほかのおじさんの臭さも摂取して補っていこうという感じですか?