「受給額への不満はありません」
2025年10月からの2年間。昨今の物価上昇や消費額の増加を踏まえ、生活保護者の生活費に充てられる「生活扶助」の金額が月500円加算されることになった。とはいえ、そもそも生活保護を受けている人が、現状ではどんな経済状況で暮らしているのか、その内情まではなかなか見えにくい。そこで今回は、3人の生活保護受給者に家計の内訳を紹介してもらった。
まずは、近畿地方在住の大沢恵子さん(仮名・54歳)のケースを紹介したい。彼女が生活保護受給者となったのは一昨年1月のことだ。
「もともと東京のある専門学校で非常勤講師をしていたんですが、3年前の春に地元の関西方面で似た仕事をしないかと声がかかり、引っ越してきたんです。ただ、こちらでは総勢100人以上もの生徒を受け持つことになり、授業の準備や生徒からの相談などでなかなか休めない日が続き、1年も経たずに休職する運びに。その際、親や兄弟に生活費について相談したものの、みんなギリギリの経済状況で私に回せるお金がなくって、『助けてやりたいんだけど、ごめんな……』と。それで生活保護の相談に行ってみたんです」
大沢さんは、市役所の職員からある条件と引き換えに生活保護の受給を許可されたと続ける。
「実は10年以上前から過労により鬱病と発達障害の診断を受けていて障がい者手帳持ちだったのもあり、意外とすんなり生活保護は下りました。ただ、『なるべく早く就労先をみつけてほしい』と言われ、役所と提携している人材派遣エージェントの紹介で、2カ月後にはあるA型作業所に就職ました。いまは生活保護費の6割は就労収入で、受給額との差額を受け取っている形です。だいたい、就労は月に6〜8万円、生活保護費と足して月12〜13万円はもらえています。仕事はCG作成で、パソコン1つでできる在宅仕事なので、スキルアップも目指しつつコツコツ続けられていますね」
そんな大沢さんの家計簿を紹介してもらった。
「家賃は水道費込で5万2000円ほど。電気ガスは冬場だと約6000円で、ネット代2500円、携帯の通信料が1000円。食費は外食費込で4万円、日用品は5000円ほど。そのほか、昔からのキャッシングローンを月6000円ずつ返済しています。あと、趣味でインディーズバンドに所属しているので、たまにライブをするとハコ代などで数千円ほど飛んでいきます……。だいたい月に数千円は余るのですが、貯金が5万円を上回ることはないですね」
あくまで概算だが、月に計11万2000円ほどかかっていることになる。収入の12~13万と比較するとかなり逼迫しているように思えるが、本人としてはどのように感じているのだろうか。