人権派格闘技漫画の最高峰『テコンダー朴』を世に送り出した義士・白正男先生が、日本人に正しい歴史認識と人権思想を啓蒙すべく、筆を執っている本連載。「上級国民」という言葉を広く世に知らしめた「池袋暴走事故」の飯塚幸三氏が昨年10月、老衰で死亡した。白先生は飯塚氏の晩節を他人事にすべきではないと言う。
第24回:池袋暴走事故の〝上級国民〟の晩節は他人事ではない
あの〝上級国民〟が崩御した。2019年4月、東京・池袋で車(プリウス)が暴走し、横断歩道を通行中の歩行者11人が死傷した事故が起きた。
この「池袋暴走事故」を起こした飯塚幸三が10月26日、老衰のため死亡したという。飯塚は2021年9月に過失運転致死傷の罪で禁錮5年の実刑判決を受けており、収容先の刑務所での獄中死だった。享年93歳は大往生といってもいいかもしれないが、本人としては不本意な最期だったに違いないだろう。謹んでご冥福をお祈りしたい。
飯塚は最後まで逮捕もされず、メディアが「元院長」と呼んで「容疑者」と呼称しなかったことから、「上級国民だから特別扱いを受けている」という批判がSNSなどで巻き起こった。しかし最終的には起訴されて禁錮5年の実刑判決が下された。結局のところ飯塚は上級国民の中では小物だったのではないか。元皇族の■田恆和殿下は20代の頃に人を轢き殺しているが、逮捕されなかったのはもちろん、法廷で裁かれることもなく、示談で決着している。元皇族とかいう神聖不可侵の超上級国民。元官僚とはいえ平民に過ぎない飯塚はせいぜい準上級国民。悔しいだろうが仕方ないんだ。
老いから目を逸らすと晩節を汚す
人気漫画『頭文字D』の登場人物・池田竜次は「ゼロ理論」という独自のドライビング理論を提唱している。「ドライバーは感情にとらわれず謙虚になって、感情を無(ゼロ)に近づけて、車から伝わる情報を感じ取る」という理論らしい。飯塚は警察の取り調べに対し、「予約していたフレンチレストランの時間に遅れそうだった」と供述していたという。予約時間に遅れそうだという焦りの感情にとらわれ、それが運転操作を誤らせたのだろうか。感情を無にできていれば事故は起こらなかったかもしれない。