いがらし作品が知性の賜物だとしたら、漫☆画太郎先生の作品は野生の塊であろう。前言撤回して申し訳ないが画太郎作品は本物のバカにして爆笑できる、ただしその爆笑の奥には凄まじい反骨を感じる。「お前らこんなもんで爆笑しやがって、バカか!」という作者の怒りが伝わるのだ。馴れ合いではなくマジで。
マンガ史に語り継がれる『地獄甲子園』2巻の名シーン、「てめーーらにプレイステショーンはやんねーー!」「もちろんパラッパラッパーもなーーー!」はついにギャグ漫画が読者に対して生身のクロスカウンターを決めた瞬間であった。ギャグ漫画を見守る者は作品が面白ければ面白いほど心のどこかでその作家の破滅を夢想する。人は常識を打ち破るアウトローを持ち上げながらも一方でその転落を願う残酷な習性があるのだ。しかし画太郎先生はそんな物見遊山な読者をぶん殴り平然とマウントを取りに掛かる。常にステゴロ容赦なし。デビューから35年間まったくブレない作風はバカの条件「強靭過ぎる主観」を見事証明している。バカ漫画というカテゴリーで漫☆画太郎先生を選ばないのは「まさに外道!!!」であろう。
最後に挙げるのは拙著である『ドムーン』だ。図々しいことは承知の上だがこれは狂気に斃れ、離脱した者の一例と捉えてほしい。僕はギャグ漫画家としてサバイブするほど強靭な主観は持ち得なかったが、それならばと開き直り極限まで奇をてらおうと自分を追い込んだ作品だ。本作は鉛筆書きで殴り描いた台詞なしのサイレント漫画で、収録作のほとんどが夢オチのバリエーションで終わっている。執筆中は何度も目眩と吐き気に襲われて離人症に悩まされた。いま読み返すととてもそんな心理状態で描かれたマンガとは思えない小学生の落書きだが、当時(1999年)絶滅しかけた基地外ギャグ界隈に最後っ屁を放った自負はある。『ドムーン』は現在でもLEED Cafeで無料で読める。バカの悪あがきを笑ってほしい。
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文/天久聖一
画像/『BUGがでる』(いがらしみきお/竹書房)
初出/『実話BUNKA超タブー』2025年1月号