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「この恋愛漫画がとんでもない」しまおまほのTOP3

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そんな中突然母から「こんなの、読んでみたら」と渡されたのが『アイドルを探せ』だった。80年代中盤だった当時の女子大生ブームをそのまま描いたような本作は、深夜テレビや週刊誌を通して俗世を覗くのが大好きな子どもだったわたしの脳みそとバッチリ焦点が合った。独り暮らしを始めた短大生のチカがDCブランドに身を包みBMWを乗りこなすモテ男と大学サークルで企画を担当するオモシロ男子の間で揺れに揺れる。チカの初体験、生理のこない不安、浮気、20歳を過ぎても処女で焦る親友…10歳になるかならないかのわたしにはほとんど理解できなかったけれど、これが現実だということだけはピンときた。初体験は必ずしも本命とするとは限らないこと、「付き合う」「別れる」の他に「しばらく距離を置く」という選択肢があること、ノリでキスをしちゃうこともあること。わたしは小学3年生で『アイドルを探せ』によって恋愛を疑似体験し、漫画家になりたいと思うようになった。『マンガ倶楽部』を自主的に立ち上げ、一番最初に描いたのは『あこがれ』のパロディ漫画だった。

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90年代に入って、高校生になるとバイブルとしての『アイドルを探せ』はまだまだ心に健在だったけれど、漫画の中のファッションやワードはひと昔もふた昔も前のもので、周囲を見渡せばチャラ男とフェミ男と女子高生が我が物顔で渋谷を歩いている。男っ気のなかった中学時代を経て、恋愛は高校時代に賭けたつもりだったのに、それどころか友達の数も激減して楽しみは毎月『Olive』と『CuTiE』の発売日だけ。そこで出会ったのが岡崎京子だった。『リバーズエッジ』で描かれたハルナと観音崎の関係に、セックスが自傷行為にもなり得ると知ってとても怖かった。排他的な世界観に憧れつつも、こんな風な沼から抜け出せなくなるような恋愛をしちゃいけないと『リバーズエッジ』は教えてくれた。

『アイドルを探せ』と『リバーズエッジ』は、かつて作品の中に未来の自分を重ね、やがて今の自分と比べ、そして過去として眺めている。『あこがれ』はいつまで経っても『あこがれ』で、それはそれですごい。

こう振り返ると、恋愛漫画って、恋愛を経験する前に読むと全部自分事になっているのが恐ろしくもある。大学生で初めて彼氏ができた後に読んだ恋愛漫画は全部落ち着いて読めたと同時にほとんど記憶に残っていない。

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文/しまおまほ
画像/『『あこがれ』(細川智栄子/講談社)
初出/『実話BUNKA超タブー』2025年3月号

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