59本目・『青春の甘き香り』その六
誰かと。ある日。突然出会う。
クラス替えだったり入学入社だったり人に紹介されたりつまりはっきりと出会うこともあれば、たまたますれちがったり、たまたま電車やバスで隣りに座ってたり立ってたり、スーパーマーケットのレジで前に並んでたり、そんな出会いもある。電車で隣りに座ってた人をいちいち覚えていることはない。それが何日も続いたりすると覚えるかもしれないが話しかけることもないだろうから、ま、結局はなにもないまま天地が過ぎてその電車に乗らなくなれば忘れる。
アルバイト先で知り合った人なんかも話したりめし食ったりしてたら忘れることはないかもしれないがそれだけでなにかが始まるということもない。
ま、ほとんどの出会いは単なる出会いにすぎず電車の車窓から見える景色と変わらない。通りすがりに目にする家々と変わらない。その家を訪れるわけでもなければその家に住む人と親しくなるわけでもない。
SNSを多用すればするほど目にするものは増えてもなにも始まらない確率は高くなる。流すことに慣れてしまうからだ。重大な出会いがもしそこにあっても、流す癖がついてしまっている。
ここで暗躍するのが無理やりコンタクトをとってくる通称犯人である。流しても流してもその手の犯人は図々しく押しかける。流しまくっている現代人は基本さびしい。基本孤独である。図々しい人間がそこに入り込む。増加しつづける特殊詐欺もここに含まれる。
もうなにもかもいやになって誰もいない山奥や孤島で暮らしたいと思うこともある。それが現代だと思う。そしてそこにつけこんで図々しい悪人が犯行を重ねていく。
