警官たちは去っていった。どうやら人違いだったらしい。解放された安堵感と出来の悪いコントみたいな展開に笑いが込み上げてきた。鈴木君は心身のダメージで涙目になっていた。インド警察に比べれば日本警察なんて子供騙しだった。
翌日、鈴木君は旅行代理店で航空券を購入。「インドには二度と来ない」と言い残して帰国の途に着いた。
自分もインドから出たかったが、既に買ってある航空券を捨てるのがもったいないから、仕方なくそのまま予定通り2カ月近くインド旅行を続けた。帰国する時、自分も「インドには二度と来ない」と固く心に誓ったが、その後インドには3回行った。コロナ騒ぎが落ちついたら久しぶりにまたインドに行きたい。
文/白正男
写真/『無法ポリスとわたりあえる本 PART3警察㊙資料篇』(二見書房)
初出:実話BUNKAタブー2023年7月号
PROFILE:
白正男(はく・まさお)
職業:義士、漫画原作者。出身成分:核心階層(抗日戦士)。正しい歴史認識と人権思想を啓蒙するため、本誌連載作品『テコンダー朴』の原作を担当。