カルト問題への見て見ぬふり
「山上は統一教会によって家族がボロボロになっても我慢してテロを起こすべきではなかった」
と言われているが、
「そもそも国やメディアは、山上が事件を起こす前に動かなければならなかった」
というのが正解だと、真っ当な知性がある人間なら理解できるのではないだろうか?
「そうですね。もともとカルト問題に対してちゃんと国が対処すべきでした。団体の活動は規制すべきだったし、被害者も救済していなければならなかった。しかし現実には真逆で、行動を怠ってきたばかりか、統一教会とズブズブな協同関係を持ってきた。山上の事件によって様々なことが可視化されたことは確かなんですけど、山上が問題をはじめて社会に提示したわけではない。少なくとも僕は以前から記事を書いていた。でも国もメディアも徹底的に無視、見て見ぬふりをし続けてきたんですよ。それこそが一番の問題ですよね。僕は安倍元首相の事件直後から、『いかなる理由があるとしても犯罪や暴力で訴えかけることは絶対にNGだ』と強く訴えています。ただ、それでも山上の事件を調査する過程で、見過ごされてきた社会問題が見つかったならそれは別個に取り上げるべきだと思います」
山上の事件を契機に、多くの人が自民党と統一教会の密なつながりを知った。若い世代は統一教会を初めて知った人も多かったし、中高年の世代であれば「統一教会ってまだ活動しているの? 何十年ぶりに聞いた!!」と驚きの声を上げる人も多かった。
しかし皆が知らないところで統一教会は何年も何年も粛々と活動していた。エイト氏はじめ統一教会を追いかけるジャーナリストは少ないながらもいた。
「僕は、統一教会とからむ安倍晋三を取材の対象にしていました。僕はペンの力で戦ってきたし、報道の力で安倍を追い込もうとしていました」
統一教会の問題だけではなく、安倍元首相を取材していた人は少なくない。総理を辞めても、国会議員を辞めても、罪を償わせることはできる。だが、死んでしまった今、安倍元首相が罪を償うことはできない。
「山上が安倍を殺したことに、喜びなんて全くなかったですよ。
『とんでもないことをしてくれたな』
という気持ちです。なんでこっちが追いかけている人間を殺しちゃうんだよ!! って強く憤りました。彼がやってきた悪業は、生きて償わせるべきじゃないですか」
安倍元首相は、山上とは比にならないほど英雄視されている。国葬される首相経験者などほとんどいない。今の日本の、惨憺たる現状を見るに、彼が国葬される理由は見当たらない。