警備に関する読売新聞の暴論
「今回の事件の一番の問題は、やっぱり警備の問題だと思います。しかし、そちらに責任を追及することなく、統一教会の報道をしてきた人に責任を問うミスリードをしている」
和歌山の事件について書いた、読売新聞の社説を見てエイト氏は呆れたという。
『(略)昨年7月、安倍晋三元首相が銃撃された事件では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題と絡め、被告に同情するような論調も一部に出て、警護の強化などの議論が十分に深められなかった。(略)』
「(統一教会問題の報道があったせいで警護の強化ができなかったって)そんなバカな話はないですよね。統一教会の問題が明るみに出て『法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律』が国会で議論されていた時間は、そんなことしないで警備に関する法律を制定すべきだった、って話になる」
今回の犯人が、山上の事件に触発されて事件を起こした可能性は高い。それはもちろん由々しき事態ではあるが、要人が襲われる事件事態は珍しくはない。
2007年には、伊藤一長長崎市長が選挙運動中に暴力団幹部に銃撃され、死亡している。15年前に、とてもよく似た事件が起きているのだ。起きているのに、安倍元首相銃撃事件を防ぐことはできなかった。そして今回の事件でもその経験は全く生かされていなかった。
警備の不手際が叩かれるのではなく、統一教会の問題と戦うジャーナリストやメディアだけが蹴られる。
統一教会の影響力への浅い認識
「恐れているのは、この事件をきっかけにメディアやジャーナリストが弱気になってしまうんじゃないか? ということですね。文化庁が、やる気を失ってきているという噂も聞きます。解散命令を出したら、統一教会は徹底的に抗議すると言っているので、正直『めんどくさいなあ』と思っているでしょうね。このままいくと、またカルト団体が野放しの、空白の30年になりそうで怖いです。メディアが黙れば、カルト教団は着々と活動を続け政治家との関係を元に戻すでしょう。実際そういう暗黒時代に戻りつつあるとひしひしと感じます」
株式会社アゴラ研究所の池田信夫氏は、
「統一教会はタブーではなく、政治力もない。現にマスコミになぐられっぱなしじゃないか。安倍さんは統一教会の事件に責任はないのだから、あの騒動には何の大義名分もない。頭のおかしい男の犯行をワイドショーが食い物にしただけ。」
とツイートしている。すでに統一教会は力を失っていて、何をすることもできないという説にはどう思うだろうか?
「影響力ないというのはある意味そうなんです。でも実際10万人くらいしかいない団体が、これだけ政権に食い込んで、政策決定とかにも関与していたり、後援会を作っていたりするのって気持ち悪くないですか? 過大評価することはないけど、池田氏の認識は浅すぎるし、まさに老害って感じですね」
5月にはエイト氏の新しい単行本『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』が小学館から発売される。「山上徹也からの伝言」というタイトルは、また「山上を英雄視している」と叩かれそうなタイトルだが……。
「小学館の提案でつけたタイトルなんですけど、すでに叩かれています。伝言とありますが、山上から何かを言付かっているとかそういう意味ではありません。発売前なので詳しくは言えないんですが、内容を読んでもらえればわかると思います。まあでも、鈴木エイトが山上徹也をそそのかして事件を起こさせたんだみたいなことを言ってるバカが一部いるんですけど、それは今後もさらに言われる予感はありますね。まあバカに何を言われても、痛くも痒くもありませんが」
エイト氏がメディアで喋るのを良く思わない人は多い。氏の言論を封殺しようという動きはあるという。それは今後も激しくなっていくだろうが、屈することなく戦い続けてもらいたい。
取材・構成/村田らむ
初出/実話BUNKAタブー2023年7月号
PROFILE:
鈴木エイト(すずき・えいと)
ニュースサイト『やや日刊カルト新聞』で副代表~主筆を歴任。旧統一教会問題を中心に、カルトや宗教の2世問題や反ワクチン問題を取材し続けてきた。著書に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)。
PROFILE:
村田らむ(むらた・らむ)
ライター、漫画家、イラストレーター。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。近書に『禁忌(タブー)への潜入で見た残酷な現実』『人怖 狂気が潜む人間の深淵』など。
安倍元首相銃撃事件が起きて以降、メディアを通じて自民党の統一教会汚染問題を追及してきた鈴木エイト氏。その裏で、政治家や教団とどんな暗闘があったのか。事件からの追撃300日をレポートする。なかでも、山上徹也被告について全く知られてこなかったスクープ情報を開示、また、鈴木氏が秘めてきたこの問題についての原点も明らかにする。さらに、この問題に鈴木氏とは違う分野、視点から関わってきた識者たちが集結。紀藤正樹、宮崎哲弥、ひろゆき、そして爆笑問題の太田光らと対話し、問題解決への道を模索する。絶賛発売中。