べたべたのオールバックに眼帯という初期のルックスは胡散臭く、奇妙なもので、そんな男が半裸でイグアナの形態模写をやったり、奇怪な大学教授に扮したり、デタラメ言語「ハナモゲラ」を延々と披露している様子は子供心に非常に印象に残っている。うちの母親などはこの時期の印象が強かったため、彼が非常に知的な人物であるのはわかるが気持ち悪くて生理的に受け付けないと長い間毛嫌いしていたものだ。
基本夜の深い時間に出演するアングラで色物扱いされる気持ち悪いタレントだったタモリ氏が平日のお昼の顔として『笑っていいとも!』の総合司会に抜擢されるというのは本当に事件だったのだ。
『笑っていいとも!』以降のタモリ氏は徐々にそういった部分を消していくことになる。
司会業がメインの仕事になる
奇怪な芸を見せなくなり、若干ソフティケートされたものの80年代のタモリ氏はトーク的にはまだまだ毒性が強く、名古屋差別ネタだったり、オフコースやさだまさしをディスるようなこともあった。ニューミュージックの歌詞やアティチュードの欺瞞性やダサさに対する批判はとても面白かったし、たまにムキになって身も蓋もない正論だけど酷いことを言うのが好きだった。肩の力を抜いたイメージの強い彼だけれど、たまにムキになって正論を言ってるときのタモリ氏は非常に魅力的なのである。
その後のタモリ氏は本格的に司会がメインとなり、自分から面白いことをやったり、言ったりする人というより、共演者の面白いところを拾ったり、興味深いものの面白さを的確に面白く表現する人になっていく。『タモリ倶楽部』のような深夜帯の番組でもそれは顕著で、本格的に知的なイメージのタレントに変わっていくことになる。
それでも、突如隠されている牙をテレビでむき出しにすることは90年代から00年代初頭にはあった。
94年から02年まで放送されていた『ジャングルTV ~タモリの法則~』は彼が料理をしたり、関根勤やナインティナイン、渡辺満里奈をはじめとする歴代女性レギュラーとロケにいったりゲストを迎えてトークしたりするいたって普通の番組で、普段は特質することはない番組だった。「お茶の間向けのタモリ」の典型的な番組の一つであり、「笑い」という点では注目するようなところはない番組だ。
しかし、何カ月かに一度、かっての自分から面白いことをやったり、言ったりするタモリが出現することがあり、そういう時のタモリ氏は本当に面白かったものである。何が面白かったかと言われると言葉では説明のしようがないのだけど、打って出てくるアグレッシブな感じと本当に意味の無い感じが本当にかっこよかった。
