安倍元首相銃撃後の生活の変化
銃撃事件がおきたとき、鈴木ファミリーは夏休みでホテルにいた。
当初報道は、旧統一教会の名称を一切出さなかったが――。
「事件の一報を聞いたとき、政治がらみ、イデオロギーがらみ、暴力団がらみというのが動機だろうという報道でした。自分が今まで書いてきたことも日の目をみることはないと思ったんですが」
途中から旧統一教会の名前が出てくると、地道に追ってきた鈴木エイトに注目が集まった。
「安倍さんの事件と統一教会をきっちり書けるのは僕しかいない」
旧統一教会の韓鶴子総裁を「マザームーン!」と何度も絶叫する山本朋広自民党議員。
「井上先生はもうすでに信徒となりました。私も大好きになりました」と持ち上げられ、会場から「井上義行コール」が沸き起る自民党議員。文鮮明を「真の御父様」と呼ぶ統一教会の信者たちの前で講演をおこないながら、なかなか深い関係を認めようとしなかった萩生田光一自民党政調会長。元自衛官で「戦場を知る政治家」ヒゲの隊長こと佐藤正久自民党議員が防衛問題を発言しながら、親族に旧統一教会信者がいたこと。
自民党というのは日頃の言説とは違い、霊感商法で日本からカネを吸い上げ、合同結婚式で日本から若い女性を吸い上げる、朝鮮半島由来の反日カルト教団に極めて甘い政党だということがさらけ出された。
「メディア側も長い間、旧統一教会問題を取り上げてこなかったことに忸怩たる思いをもっている人が多いです。今はチームJAPAN的にみんなで疑惑を追っていこうというところにジャーナリズムを感じます。特に地方局ががんばっている。僕が追い切れなかった関係性を地方局がつなげてくれたり、僕が行けなかったことを大手メディアが総出でやってくれてる。ネタを独占するつもりはない。まだ埋まってなかったピースをどんどんみんなが埋めてくれてる」
露出が増えたことで、変化があった。
「テレビによく出ていることに、子どもはピンときてないみたいです。スーパーマーケットで半額シールの買い物してたら、後ろに並んでいたおじさんに“エイトさんですよね。こんなところに住んでるんだ”って声をかけられて、恥ずかしかった」
──何の損得も考えず、コツコツやってきたエイトさんに光が当たることは、まだ世の中見捨てたもんじゃないと思いました。毎回テレビに出るたびに、エイトさんファンのかみさんが、ダンディファッションがグレードアップしていくことを喜んでいます。
「ありがたいです。そうやっていじってもらえるのは(笑)。妻が色々コーディネイトしてくれて、ローテーションで着ています」
数字に関する名前を使っていたために、ペンネームが“エイト”になった。
「癖っ毛なんですよ」と地毛を引っ張ってみせる。
巷では最近、鈴木エイト・ヅラ説が流れているらしいが、本人はとぼけた顔で言った。
「1回、番組で髪をズラしてみたらウケるかな」
先日発売された『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)は、今までの鈴木エイトの地道な取材が実を結んだ労作である。
取材・文/本橋信宏
撮影/武馬怜子
初出/実話BUNKA超タブー2022年11月号
PROFILE:
本橋信宏(もとはし・のぶひろ)
1956年埼玉県生まれ。ノンフィクション作家。著書『全裸監督 村西とおる伝』がネットフリックスで2回に渡りドラマ化、全世界公開し大ヒットを記録。『出禁の男 テリー伊藤伝』(イースト・プレス)『新・AV時代 全裸監督後の世界』(文春文庫)など著書多数。
PROFILE:
鈴木エイト(すずき・えいと)
ニュースサイト『やや日刊カルト新聞』で副代表~主筆を歴任。旧統一教会問題を中心に、カルトや宗教の2世問題や反ワクチン問題を取材し続けてきた。著書に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)。
安倍元首相銃撃事件が起きて以降、メディアを通じて自民党の統一教会汚染問題を追及してきた鈴木エイト氏。その裏で、政治家や教団とどんな暗闘があったのか。事件からの追撃300日をレポートする。なかでも、山上徹也被告について全く知られてこなかったスクープ情報を開示、また、鈴木氏が秘めてきたこの問題についての原点も明らかにする。さらに、この問題に鈴木氏とは違う分野、視点から関わってきた識者たちが集結。紀藤正樹、宮崎哲弥、ひろゆき、そして爆笑問題の太田光らと対話し、問題解決への道を模索する。絶賛発売中。