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サムソン高橋(さむそん・たかはし)
1967年生まれ。鳥取県出身。デブ専フケ専のゲイ雑誌『SAMSON』編集部で編集者およびライターとして勤務していた。2002年に退社後はフリーに。
X:@samsontakahashi
全てのブスのために再版して!
とんでもない恋愛漫画、というお題を頂戴して真っ先に私の頭に浮かんだのは南Q太の中期代表作『さよならみどりちゃん』。平凡なOLのゆうこと居酒屋バイトのユタカとの恋愛模様なのだが、一方的に恋愛感情を抱いているのはゆうこでユタカにとっては単なるセフレ。何しろ最初にセックスした後おそらく「私たち付き合っちゃう?」なんてことを告白して「あ、ダメ、俺彼女いるから」と断られたところからスタートする漫画なのである。うわーきっつう!!!
相思相愛でお互い盛り上がって一緒になる、というのが恋愛漫画では基本なのだろうが、世の中の大多数のカップルはそんないいバランスでつがってるわけはない。打算や妥協や荒井由実の歌う『少しだけ片思い』で成り立ってるわけだが、こちらは本気だけど向こうにとってはカキタレというのは少しだけ片思いにも程がある。
みどりちゃんはユタカの遠距離恋人で、本編には一度も登場しない。そして読み終わってタイトルの意味が分かると、報われない恋愛ばかりしてきたブスは号泣するのである。
号泣といえば1987年に『週刊マーガレット』で連載されていた岩館真理子『まるでシャボン』だろう。世津子と草子というダブル主人公だが、出会う男は全て草子に惹かれてしまうというとんでもないファムファタール。世津子は初恋の男を草子に奪われた数年後、草子を追いかけてきた別の婚約者にそれとは知らず恋をしてしまい、さらに初恋の男は半ば草子のせいで既にこの世にいないことを知るという残酷な展開。結局世津子は最後まで愛する人を手に入れられずに傍観者のまま終える。昭和の少女漫画でよくこんな無慈悲な作品描いたなオイ!