貧乏っぷりが悲惨すぎるがゆえに人気の漫画は数多い。そんな我々の心を掴んで離さない貧乏描写で、特にとんでもないと思う漫画を3作品挙げてもらった。今回は劇画狼さん。
PROFILE:
劇画狼(げきがうるふ)
特殊出版レーベル・おおかみ書房代表。プロ作家の単行本未収録作品の書籍化や書評、イベント司会、原画展企画などを行う。
X:@gekigavvolf
「今は下がってるけど、長い目で見たらむしろこれはいい下落…!」
最初から貧乏なキャラクターが出てくるマンガは多くあるが、今回は「人間がいかにしてどん底に堕ちていくのか」「破滅したキャラの復活劇」「畳を背負って溺れる」の3作品を紹介したい。
まずは『FX戦士くるみちゃん』。本作はFX(外国為替証拠金取引)に手を出して命を絶った母親の敵を討つために自らもFXの世界に足を踏み入れる大学生・くるみの奮闘と破滅を描く作品だが、これが「破滅していく人間の他責思考・自己正当化」の名言(迷言)のオンパレード。
勝つまで無限に借金して大逆転に備えることを「正義の借金」、「今は下がってるけど、長い目で見たらむしろこれはいい下落…!ジャンプする前に一度腰を落とすように、更なる上昇のために力を蓄えているに違いない」という自己正当化、「負けている今こそ、勝つために攻める…! タンス預金に手を付けたのはそのため…!」という最悪の屁理屈、「10円いや1円ずつでいい。日本人全員が私に寄付してくれたら助かるのに…! なんでそれができない!? この国は…!」という狂った他責など、人事を尽くしてないのに天命を待つキラキラした人たちの祈りや怒りで溢れた作品だ。脳汁に取りつかれて、経済的だけでなく精神的に貧乏になっていく人間の心模様を楽しんでほしい。