359回 ニュー・ウェイヴ私的重要盤10選
ようやく夏の暑さも終わりかなと思いながら、BABYMETAL論争をぼんやりと調べていた時に、いつものよう編集氏からのメール。
「ニュー・ウェイヴ〇〇選についてとかどうですか。最近ソフト・セル聴いて衝撃受けたので」
え、なぜ編集氏が突然ソフト・セルを?
それはともかく、編集氏からの要望にはできるだけ応えていくのはこの連載の方針であり、よくわからないがニュー・ウェイヴについて考えていこうかと思う。
まず、問題なのはニュー・ウェイヴとは何かという明確な答えがないということである。
70年代後半から80年代にかけてパンクムーブメント以降に生まれた、パンクムーブメントから派生していった様々な音楽スタイルを包括する言葉であって、特定の音楽的スタイルを指すものではないし、その言葉が指し示す範囲も人によって変わってくる。世代やその人の音楽的史観、国によっても違ってくるものだ。
そもそも、70年代後半のパンクムーブメントから出てきたバンドの中から、より「音楽的」な方向性をもったバンドを売り出すために、パンクロックの過激なイメージを漂白しようとレコード会社が商業的な理由で生み出した言葉であり、その枠に入れられたアーティストが同じ音楽的方向性であったわけではない。エルビス・コステロもDEVOもポリスもみんなニュー・ウェイヴである。また、初期のニュー・ウェイヴに属しているバンドには現在パワーポップと言われているようなバンドが多かった。
ポスト・パンクという言葉がある。現在は特定の音楽スタイルを指して使われることが多い言葉だが、これは70年代後半にパンクシーンの中から生まれてきた従来のパンクロックではない音楽的に新しい試みを始めたバンドに対し、イギリスの音楽ジャーナリストであるジョン・サヴェージが使った言葉であり、the Feeliesから、Throbbing Gristle、DEVO等が含まれていた。