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ニュー・ウェイヴ私的重要盤10選:ロマン優光連載359

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ここからが本題です

ここから後が本題というか、「〇〇選」という発注にそっていくつかのバンドを紹介していこうと思うのだが、評価が、72年生まれの自分にとっては今で言う「ポスト・パンク」もエレポップもギターポップもネオ・アコもネオ・サイケもゴスもノイズ・インダストリアルもノー・ウェイヴもニュー・ウェイヴの箱の中に入っているものである。

bloodthirsty butchersの吉村秀樹と奥多摩の河原で話している時に「ハードコアパンクというのは(言葉の本来の意味での)ポスト・パンクであり、Dischargeもポスト・パンクだ」という話になったのだが、自分の考えるニュー・ウェイヴとは80年代後半までに生まれた言葉の本来の意味でのポスト・パンクから純粋なハードコアパンクアプローチのものを除いたものという風に考えてもらえればと思う(Big Boys Minutemenはハードコアパンクであると同時に「ポスト・パンク」のバンドでもあり、当時のアメリカのハードコアパンクのシーンは同じバンドの中にそれが共存するバンドも多くややこしいのだが)。ここではそういったニュー・ウェイヴ史観で選んでみた音源の中から現在サブスクで聴けるものをいくつか紹介していきたい。

王道のものばかり紹介してもつまらないし、マニアックなものだけ紹介しても読んでる方がわからないと思うので、好きとか嫌いとかではなく、自分が重要だと思っている音源から。知名度の高いと自分が思っているバンドのものと、あまり知られていないだろうと思うものを半々ぐらいの割合で10音源選んでいきたい。

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◉ソフト・セル『This Last Night…In Sodom』(84

ソフト・セルはイギリスのボーカルのマーク・アーモンドとシンセのデイヴ・ボールによるシンセポップ・デュオ。『This Last Night…In Sodom』は彼らの4枚目のアルバムにあたる。

Throbbing GristleCabaret Voltaireに影響を受けた実験的なシンセサウンドでノーザン・ソウルにアプローチするというアイディアからスタートした。デイヴ・ボールによる冷たい音触のシンセ音と艶っぽいマーク・アーモンドのボーカルが退廃的なムードを醸し出す。

OMDThe Human League Heaven 17のように初期のシンセポップはシンセサイザーミュージックで既存のロック/ポップスを再構築するという実験的な試みが行われることが多かったが、これらのバンドがどんどん洗練されたポップミュージックになっていったのに対し、ソフト・セルのこの4枚目のアルバムは彼らのアルバムの中で最も奇妙でダークな色彩を伴っている。

意図的に安っぽく汚く録音された音。生楽器の導入。曲調もバラエティにとんでおり、マークのソロ・プロジェクトであるマーク・アンド・ザ・マンバスにつながるようなスペイン風の曲もある。マークの好きなジョニー・サンダース的な破滅的な空気が漂っていて、最も退廃的なアルバムである。

Pere UbuTerminal Tower – An Archival Collection』(85

Pere Ubuは非常に奇妙なバンドだ。70年代半ばにアメリカのクリーヴランドで活動していたRocket from the Tombsはストゥージスに影響を受けた攻撃的なプロト・パンクサウンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドや初期のテレビジョンに影響を受けた繊細なサイケデリックサウンド、現代音楽の影響化でのシンセサイザー導入といったものが同時に混在していたカオティックなバンドであり、バンドが二つに分裂した時に生まれたのがPere Ubuである。ちなみに片方はDead Boysになった。Rocket from the Tombsは混沌としたバンドだったが、そこからストレートな部分を除いた結果Pere Ubuはわかりやすくなったかといえばそういうわけでもなく、実験的な部分とポップな部分を洗練していくことで前バンドとはまた別の方向で混乱した空気を生んでいくことになったバンドである。

Pere Ubuはプロト・パンク的な部分とポスト・パンク的な部分が混在した状態でスタートしたが、パンクロック的な部分は全くと言っていいほど見られず、土着的な泥臭さがある。

巨漢ボーカル・デビット・トーマスの声は甲高い上にか細く、どれだけ激しく叫ぼうがマッチョイムズ皆無であり、バックの奇妙なフレーズのギター、シンセサイザーのノイジーなアプローチと共に聴く者の心を不安定な気分に誘う。

Terminal Tower – An Archival Collection』は彼らの75年から80年までのシングルのアルバム未収録曲を集めた初期音源臭であり、彼らの混沌とした得体の知れない感じが堪能できる。

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