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映画『福田村事件』森達也監督が考えるコロナ禍と「集団化」

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日本に根ざす「集団化」とは

「あっ」と森さんが声をあげて、「(この記事を)読む人は初めてだと思うから、集団化の説明をしておこう」と提案してくれました。

説明は「そもそも人類って群れる生き物ですよね?」から始まります。

集団化とは不安や恐怖によって人々が連帯したくなることで、イワシやムクドリと同じように、弱い生き物が生き延びる術として、約500万年前に人類が身につけました。

しかし人間は集団化が加速すると、同じ人間同士であっても、自分たちと違う性質を持っている集団を排除したくなってしまうのです。ヘイトスピーチの登場が典型的な例だと森さんは説明します。しかも排除する行為によって集団の連帯感はさらに強まり、連帯したい気持ちもますます強くなるのです。

次第に同調圧力も強くなり、誰に言われるわけでもなく、自分自身が自分に連帯を強要するようになっていきます。過去には集団化によって繁栄してきた人類ですが、戦争や虐殺など集団化の副作用も繰り返し体験してきました。

集団化が加速すると、人々は強い政治リーダーと指示を欲するのです。

「今朝、自民党総裁選の高市と河野と岸田に敵基地攻撃論について聞きましたみたいなのをワイドショーでやってて、3人とも肯定しててね。敵基地攻撃論ってこれ、言葉は変えてるけど先制攻撃ですよね? 5年前だったら議論にすらならなかったことを現職の政治家が口にしてるんだと思ったらびっくりしたんだけど、視聴者もコーヒーとか紅茶とかビスケット食べながら、早くやっつけろとか言ってるのかと思うと怖いね」

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しかし実はコロナが流行しはじめた当初、森さんは集団化の加速に歯止めがかかるかもしれないと期待していました。

「コロナはクラウド(群衆/人混み)を制御するじゃないですか。だから群れることにブレーキがかかるかなと思ったんですよ。でもそうではなかった。物理的に群れないからといって、集団化が止まるわけじゃないんだなって実感しました」

むしろ加速を実感したのは、インターネット上で目にする数々の炎上や誹謗中傷が理由です。「こうした現象は日本で特に多い」そうで、炎上や誹謗中傷がほかの国より突出して激しいと言います。理由はユーザーの匿名率の高さ。たとえばツイッターの場合、欧米諸国や韓国が30~40%であるのに比べて、日本は75%のユーザーが匿名です(※総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」平成26年版より)。自分が属する集団に個人を隠してしまう日本人の性質が現れています。

コロナ以降はインターネットの外でも、他県ナンバーの車や、営業している飲食店への嫌がらせがヒートアップしていて、「集団内のルールや正義に従わないと排除する雰囲気が強くなっていて息苦しい」と森さんは漏らします。

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