要するに穢れ意識が拭えないんですよと森さんは言います。
「日本人ってどこかで穢れ意識が染み付いてて、なんか感染るんじゃないか、みたいなね。それで言うとコロナは実際に感染るし、日本人のメンタリティを考えると、穢れ意識って結構重要なキーワードだと思うんです」
リベラル陣営と保守派の議論
「リベラルの人が、えー、ロックダウンを主張すると……保守の人が……あー、ちゃんと説明できなくてごめんなさい」
今回は私だけでなく、編集部からも森さんに聞きたい質問が寄せられていたのですが、自分なりに噛み砕いて説明しようとして失敗してしまいました。
正しくは、「リベラルな立場にある人がロックダウンなど自粛の徹底を主張することに対して、保守派の人たちが『リベラルが私権制限を自ら望むとはこれいかに』とツッコミを入れたりしていますが、そのようなやりとりに関してどう思いますか」という質問で、森さんがまず私の理解度に合わせてリベラルと保守派についての考え方を教えてくれました。
「リベラルっていろんな定義があるけれど、僕は主語を大きなものにしないことだと思ってる。かたや保守は主語が『国家』であったり『我々日本人』であったりとかね。どっちかっていうと僕は『我々日本人』とかはどうでもよくて、『自分』かなあ。イデオロギーは関係ないんですよ」
森さんはよくインターネットで「パヨク」と書かれるそうで、「マルクスもレーニンも読んだことないし、いいのかそれでって思うけどね」と笑い飛ばしていました。
リベラルには「弱い人、小さな声で助けを求めてる人にどれだけ目を配れるか」という姿勢も含まれており、そこも保守派との違いだそうです。
編集部からの質問は「リベラルな立場にある人がロックダウンなど自粛の徹底を主張」しているというものでしたが、弱い人に目を配るとロックダウンにはなかなか踏み切れないことは、森さんが編著した『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会 2020年後半』(論創社)に書かれていました。現に自粛生活で女性の自殺率が増えていたり、ロックダウンをすると子どもや貧困層など立場の弱い人たちがしわ寄せを受けるのです。
そのため、森さんの考えは編集部の想定と異なり、「みんなの命を助けるんだ」と保守派のように主語が大きくなれば、「ロックダウンに踏み切るんじゃないか」というものでした。
森さん自身はロックダウンについて「効果があるならやってもいいけどね」と言いつつ、「でもほかの国の例を見たら、変異型が現れたら太刀打ちできなくなるし、結局意味ないじゃんと思ってる」と話していました。
一部ネットでは「パヨク」と呼ばれているという森さんが、「ロックダウンは意味ない」と話すように、こうした議論については、リベラルだから保守派だからといって完全に立場と思想を二分できるわけではないと森さんは考えています。「全ての物事にはグラデーションがある」と。