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映画『福田村事件』森達也監督が考えるコロナ禍と「集団化」

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「メディアと社会は合わせ鏡です。集団化の影響だと思うけれど、日本社会の一人ひとりが外国とか自分たちと違う人たちに対して、興味を失ってきてるんだろうなって」

森さんはテレビでたまたまオリンピックをやっていて、悔しそうな表情の選手なんかを見かけると応援したくなると言います。それが日本人でも、どこの国の選手でも変わりません。

「とはいえ、わざわざ見ることもないと思うけどね。たまたま見て面白かったら見たらいいと思う」

ワクチンにもオリンピックにも肩肘を張らない森さんです。

鈍さでタブーを踏み越える

子どもの頃、遠足に行けばみんなとはぐれて迷子になり、高校生の時には大ニュースとばかりに「あいつら付き合ってる!」と同級生同士の交際をバラしては、とっくに自分以外のみんなが知ってたり……。

「ちょっと鈍いんですよ」と自身を振り返ります。

フジテレビの深夜ドキュメンタリー枠で『放送禁止歌』を制作した時も、放送後に「お前よくあんなのやったね」と友人のディレクターたちから次々と連絡が入りました。「テレビで部落問題を正面からやるのは無理だよ」と。

当の森さんは「うすうすタブーとは思ってたけど、あんまり深く考えてなかった」という調子でした。なぜならタブーと言っても、具体的に何が禁止なのかは決まっていないからです。

「よくタブーを踏み越える作家とか言われるけど、全然踏み越えてなくて、気づいたらなんかあったなみたいな。僕の経験則だとみんな怖がってるけど、触ってみたら全然そんなことなかったよって」

そんな森さんの最新作は、「福田村事件」の映画になる予定です。

「関東大震災の直後、関東全域で朝鮮人がかなり殺されたんです。千葉県北部にある福田村でも15人が自警団に襲われて、妊婦や幼児を含む9人が殺されたんですよ。しかもメッタ突きだった。ところが彼らは朝鮮人じゃなくて、香川から来た行商団だったんです。でも殺された香川県もあまり問題にしなかった。なぜか。被差別部落の人たちだったんです」

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タブーが積み重なっているこの事件の映像化はなかなか叶わず、もう何十年も頭の中にあった企画がついに実現することになりました。撮影は来年、公開予定の再来年は関東大震災からちょうど100年です。 「この映画はどう考えてもスポンサーが集まらないんですよ。普通の邦画みたいにTBSだの講談社だの角川だの、まず無理でしょう。いまから告知してお金を集めようってみんなで言ってるんで、どんどん書いてください」

というわけで、どんどん書きました。あとはコロナの影響が少しでも弱まって、撮影が順調に進むのを祈るばかりです。

※このインタビューは2021年9月に行われたものです。

取材・構成/姫乃たま
撮影/武馬怜子
初出/実話BUNKA超タブー2021年11月号

PROFILE
森達也(もり・たつや)
1956年生まれ。広島県呉市出身。オウム真理教信者たちとその周辺の日本社会を映し出すドキュメンタリー映画『A』を発表し、注目を浴びる。監督作に『A2』『FAKE』『i-新聞記者ドキュメント-』など。著書多数。コロナ禍の社会に関しては、複数の論者による『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会』シリーズ(論創社)の編著を務めている。

 

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