いろんなところから苦情が上がり、非難されているクルド人たちは、降ってわいた自分たちの問題についてどう受け止めているのか。また、どのような問題意識を持っているのか。さらには、迷惑行為を行っている同胞たちに彼らはどう声をかけるのか。
そうしたことを知りたいと思い、パトロールへの同行取材を申し込んだ。すると協会から日時と集合場所が記された文面がメールで送られてきた。
10月19日(木)、午後8時、集合地である蕨駅から徒歩5分の距離にあるハッピーケバブというクルド人経営のレストランを訪ねた。クルド人を中心とする夜のパトロールに参加するためだ。店の前には緑色の防犯ジャケットを着たクルド人の男たちが10人あまり集まっていた。そこに僕以外の5~6人の日本人。支援者の他には取材で来ている人などがいた。
クルド人の男たちは大柄で、中には185センチぐらいの者もいる。若い子は20歳ほどで年長者は50代。若者はヒゲがないが、年長者の中にはあごひげの者もいる。屈強な体躯を持っている彼らはそれだけで威圧感があり、一緒に行って大丈夫かと一瞬、不安になる。しかも彼ら同士はクルド語らしき言葉を交わしているのでとっつきにくいのだ。
それでも、恐る恐るといった調子で、彼らのあとを着いて歩いて行く。クルドの男たちは、駅へと向かいながら歩道のゴミを残らず、黙々と拾っていく。彼らに目を合わせたり、声をかける通行人は誰もいない。かといって不快そうな顔をしたり、怖がったりしている人はいない。都会的な無関心という感じだ。
苦情が多いというエリアも平和に見える
たまに写真を撮るだけでは手持ち無沙汰なので、僕もタバコの吸い殻をひろう。すると「どうぞ」と日本語で、屈強な男性のひとりがゴミ袋を広げて、受けてくれた。それを機にタバコの吸い殻や紙のゴミなどを率先して拾い、彼らのゴミ袋にどんどん入れていく。そうしたやりとりが続くうちに「なんだ、彼らいい奴らじゃん!」と思うようになった。
数十分後、ハッピーケバブに戻ると、4~5台の車に分乗して移動する。運転するのはクルド人だ。彼らの多くは仮放免という、税金の支払い義務がない帰国が前提の不安定な身分の人たちが多いと聞く。市民としての立場を認められていない彼らが果たして免許を持っているのだろうか。とはいえ、そうしたセンシティブな質問をいきなりする勇気を僕は持ち合わせていなかった。