前川や芝といった駅から数キロの距離にあるクルド人のメイン居住地を通る。ローカルな街の商店街が広がっていて、なぜここにクルド人が? と首をかしげたくなる普通の住宅街が続く。このあたりが苦情が多いエリアのはずだが、何の変哲もなく、平和に見える。どういうことなのか。
とそのとき、車窓の外にコンビニが現れた。店の前にはたむろして、酒を飲んでいる人がいる。しかし、目をよく凝らしてみると、それは日本人だった。
「今、コンビニの前でお酒飲んでるのは日本人ですね」と僕が指摘すると、中年のクルド人男性が流暢な日本語で答えてくれた。 「そうです。あとはベトナム人とかもすごく多い。店の人たちは、私たちクルド人だからどうっていうのは特に言わないよ」と。
彼は50歳ぐらいのベテラン。精悍でガッチリした面倒見の良さそうな方だ。日本語が上手なのはそれもそのはず。日本に来たのは、21年前だという。
「その頃は、今よりずっとクルド人は少なかったよ。日本に来たのは、ヨーロッパみたいにビザはいらなかったし、政治の問題もあったから」
政治の問題というのは、トルコ国内でクルド人が受けている辛い待遇のことを指すらしい。
「難民申請はしているけど、ずっと仮放免。収容所に入ったこともあるよ。仕事は解体屋。今日は午後7時半まで仕事をして、ここに参加した。パトロールは週1。起きるのは朝5時」
彼が政治的難民なのかどうかは詳しい事情が不明なので、判断がつかなかった。しかしコツコツと真面目に頑張って、日本で基盤を作ってきたということが見て取れた。
アパートを一軒一軒まわりゴミのマナーを説明
車は一路北へ。川口市の北部にある東関道の高架の手前にあるコンビニの前に来た。たむろしているクルド人らしき男たちはいない。これは同胞が来るからということで、あえてこの日は避けているということなんだろうか?