「あんなのパワハラじゃないし、言いがかりをつけられたと思って腹が立った」「どうせこっちの勝ちだと思って、調子にのって、なめた発言をした」「めんどくさいので遺族側をビビらせて黙らせようとした」「自分の責任問題を問われたくなさすぎてテンパっていて、よくわからず、あんな発言になってしまった」「いいとこ見せたくて、強がろうとして変になった」みたいな、あの発言に至った心理・過程を述べて謝罪するならわかるが、「思いが至らず」とはなんなのか。遺族に対する配慮がない発言だったということだろうけれど、配慮がないなんてわかっているから、どういうつもりでの発言だったのか知りたくてしょうがない。
現理事長のことだけではなく、当初の調査報告書を受けてパワハラはなかったとした運営サイドの人たちはどう考えていたのか、本当に知りたい。責めたいとかではなく、純粋に本当に知りたいのだ。特にこの件は新しい事実が発見されたとかではなさそうなのに、解釈だけが変わったように思えるだけに、よけいに知りたくなってしまう。
なんでパワハラを急に認めたのか。あの時はどう思ってたのか。本気でパワハラはなかったと思っていたのか。こんな程度パワハラでないと思っていたのか。何が何でもパワハラでないことにしたかったのか。 パワハラの何が悪いと思っているけど、怒られるからパワハラでないとしたのか。特に何も考えておらず、パワハラでなかったらいいなぐらいに思ってたのか。人一人の命が失われていることをどう思っていたのか。別に本気で言ってたのではなく、単なる保身だったのか。
保身だったら保身で「どうしても助かりたくで、ああ言ってしまいました。すいませんでした」と言えばいいのに。許されるかどうかは別にして。
遺族との合意は成立したものの、微妙にスッキリしないところがあって、歌劇団内の演出家による性加害疑惑についても真相解明に向けた適切な対応がとれているのか、疑わしく思う人がいても不思議ではない。過去のいじめ問題でも、さんざんな対応だったし。意見書のことを見ても宙組の劇団員は明確に変えていこうという意志が見られるし、それに運営サイドは応えてあげてほしい。
謝っても、何について謝ってるかよくわからないということはよくあるし、実際に本人も何で謝ってるのかわかっていないことすらある。だから、場合によっては「何がどうして、どうなった。だから謝ります」みたいな、あくまで言い訳ではない、ちゃんと説明がないと気になってしょうがない。逆にそれによって余計に腹が立つ場合もあるし、そうなると余計に怒られるから言いたくない人がいるのだろうなと思う。
〈金曜連載〉
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PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『嘘みたいな本当の話はだいたい嘘』『90年代サブカルの呪い』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。
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