もちろんやらないよりはマシ程度の効果はあるかもしれないが、少なくとも岸田政権が進める「子育て支援を拡充すれば出生率が増える」というロジックはとうの昔に破綻している。たとえば少子化担当大臣が創設された2007年以降を見ても、児童手当などの支出は2倍近くに増えているにもかかわらず、出生数は4割も減っているという現実がある。つまり「子育て支援」と「少子化対策」は似て非なるものなのだ。
ちなみに日本が参考にしているとしてよく根拠に持ち出されるフィンランドの家族関係政府支出は、日本の約1.7倍だが、2023年の合計特殊出生率1.26は日本とほぼ変わらない数値となっている。
「子育て支援だけでは限界がある証拠です。少子化対策は小手先ではなく抜本的な対応をしなければ意味がないんですが、そもそも先進国で出生率が下がるのは歴史的にも社会学的にも当たり前のことなので、処方箋はほとんどないに等しい」(前出・全国紙記者)
少子化対策はすべてムダ金
教育水準が上がって女性の社会進出が進めば、それだけ出産、子育てに振り分けるリソースは減少する。またグローバリズムが進んだ社会では伝統的な結婚や家族形成の様式が多様化し、結婚や子育てをしなくても満足できる生活スタイルが増えるという事情もある。
「社会が豊かになればなるほど、国民の意識は共同体の幸福より個人の幸福を追求する方向に向かうようになります。しかも経済が成長しているうちはいいのですが、その経済成長が頭打ちになった段階で、今度は将来に対する経済的な不安も増加に向かうため、子どもを産むことを躊躇するのは当然の成り行きなんです」(前出・全国紙記者)
他の先進諸国を見ても出生率の低下が問題になっている国は少なくない。日本と並んで危険水域に踏み込んでいるのがドイツと韓国。EU諸国ではイタリアやスペインもかなり危機的な状況だ。またそこまで深刻ではないものの、絶望的な経済格差が生まれているアメリカでも出生率はジリジリと減少し続けている。
「出生率低下の要因は様々ですが、共通しているのは絶対人口の減少と未婚女性の増加です。どんなに社会保障を拡充したところで根本の原因をなんとかしなければどうにもなりません。はっきり言えば、少子化対策は子どもが少なくなる前から手を打たなければ意味がないんです。すでに30年以上にわたって少子化が進行してきた日本ではもう何をやっても手遅れなんです」(前出・全国紙記者)
もうお分かりだろう。日本の現状を考えれば、今さらどれだけ大金を投入したところでムダ金にしかならないのだ。