ジェンダー学を少しだけかじった彼女は秋田市に来て驚いたことがあったという。街のカフェでくつろいでいると、出張で来ていると思われるサラリーマン2人の会話が耳に入ってきた。「秋田美人と言うけれど、どこにそんな美人がいるんスかねえ。クックック」といった内容に、彼女は震えが止まらなくなったそうだ。別にそれは彼女のことを指していたわけではなかったのだが、「男たちはそんな目で女を見ているのか!」と彼女はその後様々なメディアで怒りを訴えていくことになる。
そして、十数年続いた「秋田美人」のポスターは廃止された。制作サイドの秋田観光コンベンション協会は彼女の影響ではないと説明するのだが、後味の悪さが残る結果となった。
女性たちのミサンドリーが歪な形でLGBT運動へと接続され、社会を混乱に陥れている。それはアメリカにとって国家の危機であり、安全保障の問題だとトランプ大統領はとらえている。早速トランプ大統領は、男性でも女性でもないと自認する人が利用するパスポートの性別欄「X」を廃止。刑務所や拘置所を出生時の性別で分けるほか、ジェンダーイデオロギーに対する資金提供をストップした。19歳未満の若者には性別適合手術やホルモン療法を禁止した。
メディアはLGBT差別だというが、そうではない。今回、トランプ政権が財務大臣として任命したスコット・ベッセント氏はゲイである。彼は2011年に元ニューヨーク市検事のジョン・フリーマン氏と同性結婚し、2人の子どもがいる。17年の第1期トランプ政権時には同じくゲイのリチャード・グレネル氏が国家情報長官に任命されている。こうした人事からも分かるように、トランプ大統領はLGBTを毛嫌いしているのではなく、集団催眠にでもかかったように自分はセクシュアルマイノリティだと思い込んでいる国民を救おうとしているのだ。
平等主義が社会改革を阻害
さて、トランプ政権を支える加速主義者たちは、ここまで見てきた理由とは別の観点からLGBT政策に否定的だ。その代表格がPayPalマフィアの異名を持つピーター・ティール氏だろう。ティール氏もまた、ゲイの起業家だ。
新反動主義に詳しい評論家、木澤佐登志氏の著書『終わるまではすべてが永遠』によると、ティール氏が理想とする国家像は、民主主義国家ではない。民主的なプロセスを踏む政治システムでは時間がかかりすぎるため、自分が生きているうちに変革ができないからである。
ティール氏の有名な言葉に「私たちは空飛ぶ自動車がほしかったのに、手に入れたのはたった140文字だった」というのがある。21世紀に当然存在していると思っていたテレポーテーション、反重力、不老不死、人工冬眠、アンドロイド、火星の植民地がどれひとつとして実現できていないのは、政治がくだらないアイデンティティ・ポリティクスにうつつを抜かしていたからだ。ベトナム反戦運動、公民権運動、エコロジー、ブラック・パワー、フェミニズム、ゲイ解放運動などのニューレフトが「価値の相対主義」を蔓延させ、硬直化した官僚機構を作り上げたのだと。