トランスジェンダーの婚姻方法は二つある。一つは、法的性別を変更させて異性婚制度の中に包摂していく方法。もう一つは、法的性別の変更を認めず、同性愛者と見立てて結婚平等法制度で救済していく方法である。どちらが良い悪いという話ではなく、タイは後者で法体系を整理したということだ。
強固な家族主義が生み出したタイ型の同性婚は、ロジックとしては「性別は男と女の二つだけ」というトランプ大統領と同じだ。アメリカが「性別は生まれつき不変」だと方針転換するなら、今後はトランスジェンダーをタイのように同性婚によって包含していくしかない。わが国の最高裁は「手術しなくても性別変更は可能」との判決を出したばかりだが、性のパクス・アメリカーナ(アメリカを中心とした性の新秩序)が確立された場合、同盟国の日本は完全に梯子を外されることになる。
グローバル・ヴィレッジでは、人々は欲望に従って都市と都市とを自由に行き来する。
2025年1月11日、渋谷で行われた日本最大のゲイナイト『AVALON』は、タイ最大のゲイナイト『gCircuit』とタッグを組み、4フロアに1000人以上を集めるイベントとなった。私も友人と共に訪れたが大変な熱狂に圧倒された。ネットフリックスで配信されたゲイたちによる恋愛リアリティショー『ボーイフレンド』に出演したGOGOボーイのユーサクが人の何倍ものチップを口移しでもらっていたり、K-POP PARTY『OPPA』のフロアではお揃いの軍服を着た韓国人のゲイの子たちが韓国女性アイドルグループの振り付けを完コピして舞台で披露したりしていた。
東アジアでは2000年代初頭からこうした交流が続いていて、さながら「盟主なきゲイの大東亜共栄圏」といった様相を呈しているのである。あの中国でさえ、もはや同性愛者は取り締まりの対象ではなく、上海などでのイベントに日本人GOGOボーイが出張することは珍しくない。Onlyfansなどの個撮では、日本人のゲイが東アジアで活躍するゲイのポルノスターと相互に渡航しながらセックスをコラボする姿が見られる。
多様性イデオロギーを推進するグローバリズムに反発し、旧来の「帝国」へと戻そうとしているトランプ大統領とは一見反りが合わなさそうだが、必ずしもそうではない。
大統領の懐刀でありテクノ・リバタリアンでもあるピーター・ティール氏は、自由に生きるためにこそ私たちは効率的に監視されなければならないという。テクノロジーによって人の移動は管理するが、国家に対立しない限り統治者はあなたの人生を邪魔しない。「幸福な管理社会」という未来社会のイメージはSFの中のものではなく、すでに実装し始めている。右派政党の躍進する欧州がそれに続くだろう。
文/松浦大悟
初出/実話BUNKAタブー2025年4月号
松浦大悟が語るLGBT運動の欺瞞
松浦大悟「同性婚に反対したら即差別主義者認定するのは大間違い」
『あの子もトランスジェンダーになった』発売中止騒動を考える:ロマン優光連載269
楽しんごインタビュー ドドスコしてられない壮絶人生
松浦大悟寄稿、LGBT活動家が人権を訴えるほど当事者が生きづらいパラドックス
橋本愛がLGBT活動家から批判を浴びて謝罪「トランス女性は女風呂や女子トイレを使わない」という活動家の嘘:松浦大悟