「正直、現在いただいている受給額への不満はまったくないんです。生活保護ってちゃんと生きていけるのか不安はあったけど、意外とやっていけるな、と。食事は基本的にすべて自炊で、スーパーをはしごして少しでも安い食材を求めるようにしていますが、それも苦じゃない。たまの数千円程度の飲み会や、外出時に1000円くらいのランチを食べることもできるし、誘惑に負けて大好きなコンビニスイーツをついつい買っちゃってもなんとか生活できてますね」
とはいえ、「現状からいつか脱却したい」という思いもあるという。
「ただ、やはり生活保護をいつかは抜け出したいという気持ちはあり、今はCG作成に関するスキルアップのための勉強会に参加するなど、できることを始めています。やはり、生活保護だとパスポートをとれないから海外旅行に行けなかったり、レンタカーであっても基本的には車は運転できないのも辛いですし。本当は新しいパソコンがほしいのに、ローンが通るか心配で一歩踏み出せない面もあります。あと、今住んでいるマンションがわりと生活保護受給者が多く、『ゴミをベランダから投げないでください』という張り紙があったり、私自身も自転車にいたずらされるなどの被害にあったことも……。引っ越したいけど、お金も足りないし手続きが面倒だったりするので、支障はやはり感じています」
生活保護者をとりまく世間の偏見にもある思いがあるそうだ。
「『生活保護は甘え』といった論調を唱える人は、きっと生活保護受給者が感じている裏の苦労を知らないだけだと思って、SNSで見かけても静観するようにしています。だって、毎月欠かさずに収入をすべて提出しなきゃいけなかったり、自分の口座情報がすべて役所に筒抜けだったりするのって、純粋にストレスです。
たまに『生活保護でもこんな暮らしができるよ』という意味でステーキなどの豪華なご飯を投稿している人もいますが、きっとそのステーキ以外の1週間の食事は全部もやしだと思いますよ。それくらい余裕がないってことや、なぜその人が生活保護に頼らざるを得なかったかという背景を想像できない人が、生活保護受給者を『甘え』と呼ぶんだと思います」
関東圏在住の本山晴彦さん(仮名・47歳)は、生活保護を受け始めてもう5年になるという。「転職先のウェブサイト運営会社がまったく肌に合わず、ストレスがたまりすぎて昼休みに公園でストゼロ350ミリリットル缶を飲み、帰り道では500ミリリットル缶を5〜6本、帰宅後も4本は飲むという、完全なアル中状態に陥りました。病院に行くと、双極性障害も併発していて、とても働ける状態じゃないと診断が下り、生活保護を頼ることに。当時は病院からもらった抗不安薬をストゼロで流してハイになったりもして、衝動的に死にたいと思ってしまうほどギリギリの状態でした」