しかしオールド野球ファンの脳裏にはもっと強烈な場面が焼き付いているはずだ。そう、1959年に後楽園球場で行われた「天覧試合」。伝統の巨人阪神戦にて4対4で迎えた9回裏、先頭打者の長嶋が打った球がスタンドに吸い込まれていった。天皇が観ている前でサヨナラ本塁打が打てる唯一無二の男、長嶋茂雄。
ちなみにWBCでは大谷による「憧れるのをやめましょう」という声出しが話題になっていたが、憧れるならとことん憧れるのが長嶋流。憧れの二宮金次郎の銅像を自宅の庭に建てている。学校以外のしかも自宅に、恥ずかしげもなく二宮金次郎の銅像を建てられる唯一無二の男、長嶋茂雄。
話を大谷に戻そう。23年に2度目のMVP満票選出を果たした大谷は、プロスポーツ選手史上最高額とされる10年総額7億ドル(約1000億円)での契約でドジャースへ移籍した。ドジャースでは10人目となる日本人選手だ。第1号選手は野茂英雄だが、実は幻の第1号選手がいる。
そう、長嶋茂雄だ。
1966年に日米野球で来日したドジャースのウォルター・オマリー会長が、「長嶋を譲ってほしい」と正力松太郎に打診した。しかし正力は「長嶋がいなくなると日本の野球は10年遅れる」と突っぱねたという。
長嶋のほうがすごい。
後にその件を知った長嶋は「どうするかと聞かれたら、行っていたかもしれない」とし、「あちらではどうでしょう。うーん、僕は中距離ヒッター、打率は2割7分、8分辺りで1、2番タイプでしょうか」と。
自己分析力も半端ない。