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米山隆一が提言 消費減税は本当に実現可能なのか

社会
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この時よく、「所得税の累進課税を強化してお金持ちに負担してもらえばいい!」と言われますが、年収2300万円以上の層は、日本には0.8%しかいません。この層の適用税率を1%上げても得られる税収増は760億円に過ぎず、仮に現在の40%~45%の適用税率を100%に上げても税収増は4.4兆円、消費税廃止に必要な25兆円どころか、食品の消費税を0%にするために必要な5兆円にすら届きません。

本当に消費税廃止を所得税の累進課税強化で賄うなら、ボリュームゾーンである年収656万円~1210万円の層の適用税率を10~20%から一気に50%に引き上げることが必要になりますが、これをすれば、当然税引き後の手取りは急減し、消費税廃止の意味はほぼ没却されることになります(年収655万円以下の層は嬉しいかもしれませんが)。

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法人税増や国債増発も非現実的

「じゃあ法人税に累進課税を入れればいいんだ!」と言う人もおられ、実際に現行の法人税率23.4%を、5億円以下は20%、5~10億円は30%、10億以上は40%とする案などが出されていますが、法人は個人と違って自由に分割できます。この制度を導入した場合、例えば2024年の純利益が447億円だったイオン株式会社などは、東京イオン、大阪イオン、新潟イオン、沖縄イオン等々と適用税率が低くなるように細かく分割され、思ったような税収を上げられなくなることが容易に想像されます。

そして実際にそのような対処がなされたら、単に国が税収を上げられないだけではなく、資本の大規模化が進む世界経済において日本企業が圧倒的に不利になって日本の経済成長が阻害される大きな副作用も生じかねません。「大企業に課税すればいい」もまた、簡単ではないのです。

従って、仮に本当に消費税を廃止するなら、恐らくその財源(の少なくとも相当程度の部分)は国債の発行に頼ることになります。しかし、現在日本は減ったとはいえ毎年30兆円の新発債(新しく発行される国債)を発行しています。それだけではありません。すでに1100兆円に積み上がった国債のうち、満期を迎えた国債を借換えるために(国債の借換えというのは、国債を国債で置き換えることではなく、新たな国債を発行して得たお金で、満期を迎えた国債を償還することです)毎年150兆円もの国債を発行していますから、日本の年間発行額は現在の180兆円から205兆円に跳ね上がることになります。

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