これは、日本の年間GDP600兆円のうち、1/3を国債の消化のために充てなければならないということですが、一度でもそれにつまずけば直ちに日本国債はデフォルト、大量にため込んできた国債の格付けがDとなって投げ売りを迫られた金融機関の経営破綻が相次いで、日本経済がバブル崩壊時以上の大混乱となってしまう可能性すら低くありません。
それ以前に、現在30兆円の新発債を55兆円に増発するなら、ただでさえ上がっている金利を更に上昇させる上昇圧力となり、それを避けるために日銀が国債を大量買入れすれば、これまた現在ただでさえ上がっている物価を更に上昇させ、不幸中の幸いで多少なりとも円高となっている円の価値を再び下落させて、せっかく落ち着きつつある輸入インフレを再び惹起することとなりかねません。
安易な減税主張で政治不信に
「それなら歳出削減だ!」と言う方も当然おられるでしょうが、何せ25兆円は基礎的財政経費87.6兆円の28%、歳出削減でこの25兆円を捻出するなら、単純計算で、社会保障費も、防衛費も、公共事業費も、文教科学予算も、地方交付税交付金も、皆28%削減しなければなりません。
政府の予算に一定程度の無駄使いがあることは元より否定しませんが、いくら何でも28%の無駄削減は困難で、結果、今国会で話題を集めた高額療養費の予算が削られて自己負担増となり、高額な治療を諦めて命を落とす人が出たり、公共事業費が足りなくて道路のメンテナンスができず、八潮市の事故のように道路が陥没したり、研究開発予算が不足して日本でイノベーションが起こらず経済成長しなくなったりする可能性は高いというより、むしろ必発だと思われます。
繰り返しになりますが、要するに、世にただ飯はありません(“There ain’t no such thing as a free lunch”)。私たちが減税・給付・無償化をするなら、必ず私たち自身が、その代金を払わなければなりません。逆に言うと、今私たちがご飯を食べられている、日本という国家を運営できているのは、私たち自身が、税金、社会保障費という形で、その代金を払っているからに他なりません。