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米山隆一が提言 消費減税は本当に実現可能なのか

社会
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しかし、ここは解説者視点ではなく、野党立憲民主党の国会議員として矜持を持って言いたいのですが、現在の政治状況は政治状況として、今日本が置かれている危機的な財政状況を認識し、それを前提に将来的に持続可能で合理的な、税金の徴収方法、社会保障負担、国債発行スケジュール、政府支出の在り方を考えている議員は与野党共に少なくありません。

仮に参議院選挙の結果野党が参議院でも過半数を取った場合、まずは志を同じくする諸野党に、一旦それぞれの減税・給付・無償化の主張を棚ではなくテーブルの上にあげ、よくよくその優先順位と実現可能性を吟味して、現実的で持続可能なものから順次実行する政策実行スケジュールの合意を形成することに、全力を尽くすことになると思います。

その際、最も優先順位の高い政策の一つが、「政府・日銀のアコードの変更によるインフレ(物価上昇)抑制策」であると、私は思います。現在の生活苦、政治不信の大きな原因の一つがもう3年以上続いているインフレなのですが、このインフレに対する対策はなぜか先程来論じている減税・給付・無償化ばかりで、根本原因のインフレを抑制する話が出てきません。

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恐らくその原因は、2013年に始まってから既に12年になろうとするアベノミクスにおいて繰り返し繰り返し「デフレ脱却」が叫ばれ、国民の頭にも国会議員の頭にも「インフレを実現してこそ賃金が上昇する!」という固定観念が刷り込まれて、インフレ抑制策を言い出せなくなっていることにあるのだと思います。しかし、インフレを放置どころか、未だに実質的な金融緩和を続けてインフレ誘導政策を取っている中で、様々な減税・給付策を講じても、やがては財源が枯渇して対策を打てなくなり、インフレに歯止めがかからなくなる矛盾に、もう気が付くべき時です。

そのための具体的インフレ抑制策は極めてシンプルで、「物価上昇率が安定的に2%を上回る」という政府・日銀のアコードを破棄し、「物価上昇率の目標を1~3%」とする新たなアコードを締結して、日本銀行が、市場の実態に合わせた、柔軟かつきめ細かい金融政策を実行して、インフレの抑制を可能とすることです。この政策は、物価上昇率の目標を変えるだけなので1円の予算もかかりません。

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一方でそれは、日銀が経済状況に応じて利上げをし、それによって現在1100兆円に積み上がった国債の利払いが急騰することを意味し、政府に国債の発行に頼らない財政運営と、歳出を歳入の範囲の抑える合理的改革、そして金融緩和や財政出動に頼らずに経済成長を実現する堅実な成長戦略の策定・実現を迫ります。それはつまり、この12年間日本覆ってきたアベノミクスの呪縛からの決別を、意味します。

少数与党の中で参議院選挙を迎える今、アベノミクスの呪縛から脱して、現実的で、合理的で、創造的な政治に転換できるか否かに私たちの未来と日本の行方はかかっており、政治の責任と、それを選ぶ国民の選択は極めて重いと、私は思います。

 

文/米山隆一
初出/実話BUNKAタブー2025年7月号

米山隆一

PROFILE:
米山隆一(よねやま・りゅういち)
1967年生まれ。新潟県出身。東京大学医学部卒業。独立行政法人放射線医学総合研究所、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、おおかた総合法律事務所代表弁護士などを経て、2016年10月に新潟県知事就任。2021年10月、衆議院議員選挙にて旧新潟5区で初当選。当選2回。立憲民主党所属。
Twitter @RyuichiYoneyama

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