そしてその代金の払い方、税金の徴収方法、社会保障費の負担、国債の発行のスケジュール、政府支出の在り方については、もちろん様々な不満や改善点が多々あるとして、そうなったなりのそれ相応の理由と経緯があり、それを変えるなら、やはりそれ相応の検討をして、安定的に持続可能で合理的な、税金の徴収方法、社会保障負担、国債発行スケジュール、政府支出の在り方を考える必要があることになります。
私の所属する立憲民主党を含む与野党が、そういう長期的視点を持たず、一般有権者に受けのいい減税・給付・無償化策をバナナの叩き売りのごとく提示し合っているように見える現状は、仮に本当にそれらを実行したら前述のような大きな混乱を起こしかねませんし、逆に選挙が終わった途端「やっぱりできませんでした」と言って公約を取り下げるなら大きな政治不信を招きかねず、私は深い危惧を禁じ得ません。
アベノミクスの呪縛からの脱却
では、そのような事態を回避してより良い日本の未来を創るには、一体全体どういたらいいでしょうか?「与野党が目を覚ましてまともになれば良い」ということならそれはその通りなのですが、それでは一瞬で話が終わってしまうので、現在の政治状況を前提に「あり得るストーリー」を考えてみましょう。
野党の立憲民主党の議員の私が言うのも相当なんなのですが、現在の日本政界は「財政規律を重視する与党自民党」vs「立憲を含め消費税減税等を主張する野党」の構図となっており、持続不可能な無茶な減税・給付・無償化政策にタガがはめられる最もストレートなストーリーは、率直に言って、参議院選挙で自民・公明党が勝利し、その後の衆議院選挙で過半数を回復することです。
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しかし、永田町ではちらほらと出回りだした参議院選挙向けの与野党の世論調査を見る限り、自民党の裏金問題に端を発した政治不信と、現在の物価高に対する不満は極めて根強く、与党自民党の支持は低調で、そのストーリーが実現する可能性は高くありません。また、先程は「財政規律を尊重する与党自民党」と言いましたが、もともと自民党はバラマキ志向の強い政党である上、野党の攻勢や世論調査の結果に浮足立ったのか、自民党内でも消費減税を求める声が強まって参議院自民党の8割が消費減税を求める状況となっており、与党自民党が勝利したら真っ当な経済・財政政策が行われるとも言えません。
一方の野党に目を転じると、これも率直に言って、財源も実現・持続可能性も考えているとは思えない減税・給付・無償化政策のオンパレードで、比較的財政規律重視の視点が強かった私の属する立憲民主党も1年の時限付きとはいえ食料品消費税0%を打ち出しています。これまた更に率直に言って、仮に参議院選挙の結果野党が参議院でも過半数を取って現在の野党の連立政権ができた場合、この減税・給付・無償化政策のオンパレードを一体全体どう収拾するのか、苦慮することになると思われます。