「版元は、あくまで『著者が見た夢に基づく内容であり、決して皆様にいたずらに不安をあおることを意図しているものではありません』としていますが、まあ、確信犯でしょうね。内容も信ぴょう性も幸福の科学のイタコ著作と大差ありません」(出版関係者)
しかも、この「7月5日予言」を利用して再生数を稼ぐYouTuberも大量発生。「7月5日に南海トラフが来る!?」「大地震は人工地震である可能性」など、政府や気象庁を疑う予言が溢れかなりの再生数を稼いでいた。彼らの多くが再生数から広告収入を得ており、なかには「月収100万円を超えた」と自称するYouTuberも存在する。つまり、彼らにとって陰謀論は「信じるもの」ではなく大衆の不安を金に換えるための商材にすぎないのだ。
こうした陰謀論は芸人やタレントの副業にもなっている。代表格は「Mr.都市伝説」こと関暁夫だろう。無名芸人だった関はテレビ東京の「やりすぎ都市伝説」シリーズでブレイクし、フリーメイソンやユダヤ陰謀、AIによる支配など、世界中の陰謀論を手当たり次第に語り続けてきた。番組の知名度を生かして関連書籍を多数出版し、講演やサロンを展開するなど都市伝説の商業化に成功している。
「陰謀論をコンテンツとして扱いファンを獲得したり、自己ブランディングに活用する手法はYouTuberや芸人の間で一つのテンプレートになっています。陰謀論はビジネスでもあり、キャリア戦略でもあるんです」(前出・出版関係者)
商業的な陰謀論は自然災害にとどまらない。より深刻なのは、医療・科学・食の分野におけるデマだろう。たとえば「現代医療は病気を治すのではなく、患者を長く囲い込むための仕組みである」という主張だ。SNSでは遺伝子組み換え作物や食品添加物、ワクチン接種に対する不信が広まり、「国民は製薬会社と厚労省に毒を盛られている」とする言説が「自称専門家」によって横行している。
この種の陰謀論を定番化したのは内海聡や船瀬俊介らの一派だ。彼らは、医療や食品にまつわる不安を徹底的に刺激し、「薬を飲むな」「医者に行くな」「自然療法こそ真理」といった主張を展開。自らが代表を務める団体やオンラインサロンで高額なサプリメントや講座を販売するビジネスモデルを確立しているのだ。