もちろん無礼ではなく、適度な冗談ややりとりを通じて、距離を縮めていく。気を遣いすぎて言葉が減るよりも、少しずつラフな関係を築いていくことのほうが、チームの空気をよくする場合も多いです。
年齢や立場にとらわれず、相手の懐に入る努力をする。相手がそれを受け止めてくれる人なら、なおさら。適切な距離感でユーモアを交えることで、組織に一体感が生まれていきます。
人との関係は、正しさだけではなく、相手を見る力が重要。大谷選手のように、空気を読みつつ踏み込む勇気も、チームで輝くためのスキルなのです。
5.「高校時代の寮生活は特別な時間だったと思います」
「自分の活躍がなくても、チームが勝てばこころから嬉しかった」。
大谷選手がそう振り返るのが、高校時代の寮生活です。利害関係や打算がなく、ただ一緒にがんばる仲間がいる。そんな時間を「特別だった」と表現するのは、大谷選手の中でその喜びが本物だったからに他なりません。
私たちが「本当の友人」と呼べる関係を築くには、ただ一緒にいるだけでは足りません。大切なのは、何かに本気で打ち込む過程で、同じ目標に向かって並走すること。その中で、損得なしに相手の成功を喜べる自分になれるのです。
打ち込む対象があることで、関係は深まり自身も変わっていきます。仕事でも趣味でも構いません。努力の先にある絆は、かけがえのない財産となります。大谷選手の原点は、そんな無垢な仲間との寮生活の時間にありました。高校時代のチームメイトは、ドジャースのチームメイトもまた違うとも語っていました。
「本気の友情は、本気の挑戦から生まれる」と、彼の言葉が教えてくれます。
6.「マドン監督とは毎日話をしていました」
エンゼルス時代、大谷選手はジョー・マドン監督と「毎日話をしていた」と明かしています。ただのルーティンではなく、自分から積極的に関わろうとする歩み寄りが、信頼関係を築いていきました。
上司と部下の関係でも、この件は参考になります。報告や相談だけでなく、何気ない会話を交わすことで、お互いの人間性や価値観が見えてくる。そうして少しずつ距離が縮まり、意思疎通もうまくいくようになるでしょう。 「話す理由がない」と感じるときこそ、むしろ会話が必要なタイミングなのかもしれません。信頼は、日々の積み重ねの中に育っていくもの。大谷選手のように、自分から壁を越えていく行動こそが、チームの一体感を生んでいきます。
そしてもう1つ重要なのは、相手に「気にかけられている」と感じてもらうこと。たとえ短い言葉でも、継続的に声をかけられれば、相手は安心し、こころを開いてくれます。上司だからこそ、待つのではなく、歩み寄る姿勢が求められるのです。
7.「先頭バッターだしヒットを打ったらペッパーグラインダーをやってよ」
WBCで日本代表にはじめて加わったラーズ・ヌートバー選手。日本の選手たちにとっては馴染みの薄い存在でしたが、壁を最初に壊したのは、大谷選手の言葉でした。 「先頭バッターだし、ヒットを打ったらペッパーグラインダーをやってよ」
