前出外務省出身ベテランは言う。
「世界の平和と繁栄をもたらすのはドナルドだけという姿勢は、欧州の首脳たちの外交とまったくの正反対。今後EUやアジア諸国との安全保障論議でネックになるのは間違いない」
そして3つ目が中国問題だ。
「元々トランプ氏が3月末に中国を訪問して米中首脳会談をやる予定だったから、その前に高市首相はトランプ氏に会うのが目的だった。昨年の高市首相の発言以降関係が悪化している日中関係改善のためトランプ氏に手を貸してもらおうという狙いがあった。そのためには米中会談の前に日米会談をやって詰めておきたいと調整した」(外務省OB)
首相がこの時期の訪米でトランプ氏と合意したのは今年1月2日。
当時、自身の不用意な台湾有事を巡る国会答弁に対する中国の猛反発に直面していたが、実質的な力がなくどうにもできない高市氏としては、4月の訪中を調整していたトランプ氏と事前に会談し、日本の立場を説明する狙いがあった。そして中国に対して助け舟を出してもらいたかったのだ。
だが、イラン戦争が起きた。今回の首脳会談のテーマは一気にイラン情勢やこれをめぐる日米同盟の在り方になった。
対米依存体質が露わに
日本にとって重要な中国との関係の沈静化を図る議題は今回の首脳会談でどこまで話されたのか。
前出外務省OBは言う。
「現場からは、今回の会談では、日中問題での支援まで話が深まらなかったと聞いた。延期された米中首脳会談は5月上旬に行われることになったが、それまでの間に、トランプ氏とは再度この問題を話す機会が得られるか難しい。そうなると、5月の米中首脳会談は、米中で世界経済や安全保障をやっていこうと話が盛り上がり、日本のことなんか置いてきぼりになってしまう。ということは日中の冷えた関係はそのまま続いてしまう」
今回の首脳会談では、現時点での自衛隊派遣のリスクだけは乗り切ったが、今後トランプ氏が何も言わないとは限らない。
対米依存体質で、その場限りの将来を切り売りする高市日米外交の結果、代償を払うのは国民だ。悲願とまで言っていた消費税減税は議論も進めず、アメリカにはアラスカ原油も含め約87兆円の投資を約束し、4月からは『防衛増税』や『独身税』、年収の壁撤廃という名の『社会保険料の強制徴収』など実質的な増税も始まっている。
高市政権下にとってアメリカは日本の君主なのか。そして上納で国民の犠牲は増えるばかりだ。
文/村嶋雄人
初出/実話BUNKAタブー2026年5月号
