46本目・『青春の殺人者』
市原悦子と内田良平。
このふたりはもちろん人気俳優で、たくさんの役を演じているがこの映画で演じた母親と父親としての市原悦子、内田良平は俺が生きているかぎり、脳、というのではなく腕や脚や胸あたりの、血管の記憶として消えることがないだろう。
父親殺し、母親殺しの尊属殺人。
それも愛している愛されている親を殺すのだ。殺されるのだ。
問題のある家庭ではない。
コツコツ積み上げてきた幸せ、とでも言うのだろう。
たいせつにたいせつに、ろうそくの炎を手のひらで包んで守りながらそして温まりながら日々を重ねてきた父ひとり、母ひとり、子ひとり。三人の集団。三人の思い出。
三人の世界。
三人だけの世界。
それを子が壊した。殺して壊した。
ゴダイゴ『新創世記』の甘美なサウンドが見る者を永遠にフィルムの中へと誘う。。。。。
長谷川和彦監督のデビュー作。
長谷川和彦監督は誰も見たことのない、描写したことのない、体験(した人は実体験としているだろうけれども映画としては)したことのない世界を作り上げた。おそらく、そうでなければ自分がメガホンを持つ意味がない、言い過ぎだったら薄くなる、と思われたのではないだろうか。