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「この漫画の貧乏っぷりがとんでもない」」ロマン優光のTOP3

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貧乏っぷりが悲惨すぎるがゆえに人気の漫画は数多い。そんな我々の心を掴んで離さない貧乏描写で、特にとんでもないと思う漫画を3作品挙げてもらった。今回はロマン優光さん。

PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
1972年生まれ。高知県出身。「ロマンポルシェ。」のディレイ担当。ソロのパンク・ロック・ユニット「プンクボイ」としても活動している。近著に『嘘みたいな本当の話はだいたい嘘』など。
X:@punkuboizz

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同じ出来事が切り取り方しだいで喜劇にも悲劇にもなる

『赤い文化住宅の初子』(松田洋子)は地方都市を舞台に、父は蒸発、母はすでになく、高校を中退した兄と文化住宅にすむ中学3年生の少女・初子。経済的に困窮した生活の中で少女に起こる様々な不幸を淡々と描いた作品であり、傑作であることに間違いのない作品だが、ここで取り上げるのは単行本同時収録のPAINT IT BLUEのほうである。

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地方都市を舞台に実家の零細工場で働く主人公のドン詰まりな日常を松田洋子らしい毒々しい笑いでもって描いた作品。

主人公である原実郎と同じく、零細工場の息子であるラリモトは綽名からわかるようにいつもシンナーでラリっている。当然、歯がない。父は不渡りをだして蒸発し、工場は倒産。幼い妹と二人暮らしとなってしまったラリモトだが、特に建設的なことをして状況を打開しようということもない。幼い妹をほっといてただラリっているだけである。

ラリモトの父に逃げられて自分の工場が不渡りをだしそうになっているオッサンの悲惨さときたらこの上ない。ほんとに悲惨。ドン詰まりの生活を送っている人間が大勢出てくる本作の中でも一番悲壮感にあふれている。

いつ倒産するかわからない未来の見えない工場。劣悪な労働環境。実郎はプレス機に手を挟んで指を一本切断することになるし、ほんとに悲惨なことだらけなのだが、登場人物はラリモトを筆頭にみんな元気だし、変な陽気さが漂っている。

少し切り取りかたを変えるだけで『赤い文化住宅の初子』のようなテイストの作品になるだろうし、出来事をそのままに少し切り取り方を変えるだけで『赤い文化住宅の初子』も『PAINT IT BLUE』のようなテイストになる。同じ出来事が切り取り方しだいで喜劇にも悲劇にもなるということを改めて意識させられた点で、単行本としてもよくできていると思う。

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