確かに万年プレーオフに出場できないエンゼルスでは味わえない真剣勝負を大谷選手自身が味わいたいからこその出場だっただろうし、投打二刀流での出場も本人の望むところではあったのだろう。結果、日本中の期待に応え、大谷選手は14年ぶりのWBC優勝の立役者となった。しかしその結末が、シーズンオフから二刀流で体を酷使しての今回の怪我である。栗山監督の日本ハム時代の「無理をさせない」という大谷起用法が絶賛されているが、「無理をさせない」というなら、WBCでは、せめて打者のみでの出場とさせるべきだったのではないだろうか。
結果論になってしまうが、大谷選手が疲労の蓄積によって今回の怪我を負ったのであれば、当然その疲労にはWBCも関係している。そして、大谷選手の本分は日本代表の一員としてWBCを戦うことではなく、エンゼルスの一員としてメジャーリーグの舞台で戦い抜くこと。本分たる戦場で、体を酷使するならまだしも、あくまでもイレギュラーなイベントで体を酷使するなど、それこそあってはならないだろう。
そのWBCの監督で、大谷選手を二刀流で起用した栗山監督が、大谷に「無理をさせなかった」として評価されるというのは幾分おかなしな話である。
文/田崎寿司郎
トップ画像/首相官邸ホームページより