埼玉県は親学が盛んな土地である。
元・日本会議役員で旧統一協会との関係もささやかれる右翼的思想の政治運動家・高橋史朗氏が提唱した親学。発達障害は後天的なものであり、伝統的な家庭教育によって予防可能であるといった主張が批判されたことで知られるが、事実ベースではなく、右派である高橋氏の家庭というものに対するノスタルジック(かつ現実には存在したことがなかった)な理想が反映された非科学的で心情的な要素の強いものである。
こういったことから、リベラル・左派の人の中には、今回の条例改定案と親学やそれに連なる右派思想・団体の家庭観と関連づけて考え、「右翼」批判に結びつける人も多い。
しかし、この問題は本当にイデオロギーに関する話なのだろうか?
記者会見でも注目を浴びた自民党埼玉県議団の団長である田村琢実氏。右派だと思って彼のX(旧Twitter)を見に行った人の中には驚いた人がいるかもしれない。靖国神社の参拝のポストを見て「やっぱり」と思った後に出てくるのは「LGBT理解増進法」に関する肯定的なポストやLGBTの人権に関するリベラルなポストを肯定的にリポストしている様子。家父長制度に対する批判的な発言もある。想像していた右派とは違っていたはずだ。 彼が日本会議に属していたことも、今回のことを右派の仕業だとみなす一因になったのだと思うが、LGBTの人権問題や選択的夫婦別姓の問題で意見が合わなくなり、現在は離れていると本人は語っている。
日本会議の機関誌や保守系の雑誌からは批判的記事が掲載されたり、右翼団体に街宣活動をされることもあったという。
神社本庁の人権意識を批判したり、高市早苗氏名義で送られてきた丸川珠代氏らの連名による夫婦別姓に反対するようにという要請書を批判したり、ここだけ見るとリベラル寄りの意見を持つ人に見える。しかし靖国神社に対するスタンスなどから察するに、稲田朋美氏と同じように基本的には右派だが、LGBT問題や夫婦別姓の問題に関しては左派的な方針をとっているということなのだろう。