家父長制度に否定的な人間が親学的な視点でこういったアクションを起こしたというのは、普通だったら考えにくい。
一方で人権問題に対して深く考えているなら、今回のような実現すれば住民に多大な負担をかける改定案はださないだろう。
神社本庁や丸川氏らに対する批判も「かっこいい」ようなことは言ってるが、その裏に深い思考があるようにも思えない、表層的な言葉が並んでいる。
原発再稼働に関する意見書を出した際の発言も、非常に適当な感じがするものだった。
靖国や原発再稼働に対しても特に思い入れがあるようでもなく、人権問題に対してもそんな感じだ。稲田朋美氏の場合、LGBTや夫婦別姓の対する個人的な想いが伝わってくるので、意外ではあるが納得はするのだが、田村氏に関してはそういう想いがよくわからない。
条例を制定しようとしたり、意見書を出すことが多いのだけれど、特に深いものが感じられない。そうなると目立つ実績をつくりたいためのようにも思えてくる。
もしかして、この人は特に思想というものはなく、政治家として注目をあびて、より上にいきたいという気持ちだけで動いている人なのではないだろうか。
現在は夫婦別姓や同性婚を敵視する政治的に影響力を持った年配者が多くいるが、より若い世代は肯定的というか、積極的に推進したりはしないが、特にそれが問題であるという風に考えていない人が多い。
田村氏は51才。政治家としては若い。彼が政治家として脂がのる時期には、今いる年配者は既にいなくなっている可能性は高く、若い世代に向けてアピールすることの方が重要であると考えても不思議ではない。色々とわからない人だが、彼自身をアピールするために活動していると解釈して考えると、変に納得できてしまう。
この問題はイデオロギーの問題というより、野心的な政治家が目立つ実績をあげるために浅薄な思考で話題になりそうなところでブチあげてみたはいいが、あまりにも雑で住民の生活を無視したものだったので総スカンをくったという、政治家個人の資質やそういったものを許してしまう県議団の現在の空気の問題だったのではないかと、個人的には考えている。
こういうことを考えている間に文春で田村氏の不倫報道が…。話題になってから数日でこういう話がすぐ出てくるところに、周囲に敵が多いのを感じるし、自分本位で強引だから嫌われているのだろうなと思ってしまう。これをきっかけに田村氏が失脚すれば、自民党埼玉県議団も今までのリベラル層に派手にアピールするような方向性から離れのではないだろうか。その方向性が親学にベッタリだったりすることがないといいなと思う。
それはともかく、左派だから右派だからこうだろうと単純化して考えること自体が間違っているし、「自分が悪いと思うことをやる人間は敵陣営であるはず」というふうにレッテル貼りするのはバカバカしい話だ。そういう人が左右関係なく存在するのが今回の件ではわかりやすく可視化されていたと思う。
〈金曜連載〉
写真/10月10日TBSテレビ『Nスタ』より(スクリーンショット)
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PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。
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