暇なを潰せるコスパ重視
【月曜日】
「おはよう!」と家族で挨拶。テレビで朝ドラを観ながら食卓を囲んで「今週もがんばろうね♪」……みたいなことがあるわけない。弱者中年男性が結婚しているわけがない。子どもが居るわけがない。
厚生労働省が9月29日に公表した2023年度版『労働経済の分析(労働経済白書)』によれば、年収200万円未満の20代男性が結婚する割合は1割程度である。これが中年ともなれば限りなくゼロだろう。
加えて、人生において何ひとつ上手くいっていない弱者中年男性が成功者の立身伝である朝ドラを観るわけがない。朝から胸糞悪くなりたくない。
朝起きて最初にやるのはスタミナが満タンに戻っている無料スマホゲームの周回ルーチン。妻や子がいないことで無限に押し寄せる暇な時間をいかに潰せるかが勝負の弱者中年男性としては、無料スマホゲームがマストアイテムである。
無論、無課金勢。レベルが上がって無料で遊べる時間が少なくなったら、リセットして最初から、初心者特典で楽しく暇な時間つぶし。今、流行りの時間重視なタイパより圧倒的コスパ重視。時間ならいくらでもあるんだよ!……と、スマホゲームを勤しんでいると世の勤め人が始業する9時にメール着信。開いて見るとバイト落選の報だ。
「時給1113円の喫茶店のバイトなのに、また落ちたのかよ……」
そう、弱者中年男性は最低賃金のバイトでも余裕で落ちまくる。
履歴書を見て、喫茶店で仕事した経験がなければ、喫茶店のバイトは落ちる。それが今の日本の底辺における雇用事情。これが20代からギリ30代までなら「若いと覚えも早いから、雇うか……」となるが中年だと「覚えも悪いし、『年下に仕事を教わるのはプライドが許さない』とか言いだしたら面倒くさいからやめるか……」となる。40歳を越えると最低賃金のバイトすら落ちまくる現実を見せつけられる。
世で言われている「深刻な人材不足」とは、正しくは「深刻な“キャリア人材”不足」だと知れ!
そうなると今までやってきた倉庫の仕事(ネットで注文された商品を選ぶピッキングや検品、ラベル貼り、梱包、出荷など)をやるしかないが倉庫は家から遠い。
電車に乗ってまで仕事に行く気力はないので、近所のバイトに応募しまくる。その作業も昼には終わり、もうやることないし、遊びに行くカネもないので自宅で安酒を飲んでひたすら時間つぶしを始めることに。
買いだしに行こうとすると奥から声が聞こえてきた。