ネトウヨのデマでもない
この手のネタを「ネトウヨ」のデマみたいに扱って怒っているリベラルや左派の人もいるが、これは別の問題として考えないといけないとは思う。
釣りポストにしろ、ネタポストにしろ、無自覚な差別意識がそこにあると指摘でき、差別の問題に繋がっている。特に井戸デマを使った釣りポストなどはリベラル・左派をターゲットにしているわけで、そういった人に対して明確に敵意がある場合も多いし、それが「ネトウヨ」的なものから来ている場合もある。しかし、こういうタイプのポスト主の全てを「ネトウヨ」とレッテル貼りしてくくるような雑さは別のことでも出てくるだろうし、雑にくくることの弊害は必ずでてくる。あからさまに嫌韓的な志向のアカウントによるものでなければ、ネット住人の無責任な面白主義と無自覚な差別意識の問題として批判すべきだと思う。
雑につくりすぎてバレバレのリベラル・左派なりすましアカウントで自衛隊に暴言を吐いたり、救助活動の妨害行為を宣言して、特定の界隈を貶めようとする人間もいるし、それにまんまと乗っかってしまったり、わかっててわざと乗っかって攻撃したりする様子も見られる。
さらにそういうアカウントを反対陣営のなりすましだと断定する人もいるが、釣りで遊んでいる悪質な愉快犯である可能性もあるわけで、そういう悪意の存在に対して無防備すぎるのではないだろうか。世の中を二分割して単純化していると、想定外の悪意に足下をすくわれかねない。
陰謀論にしたってリベラル・左派風の主張をともなった陰謀論者もいれば、保守・右派的な主張をともなった陰謀論者もいる。歴史修正主義からきた陰謀論もあれば、オカルト・スピリチュアルからきた陰謀論もある。自分が信じているものがいつだって無謬なものだと考えるのは大間違いであるだし、自分と考えが違うものが常に間違っていると思うことも大間違いだ。そんなことでは、自分の信じるものが間違った時に無理矢理間違ってないことにして信じようとしたり、自分と考えが違うものが正しくても無理矢理間違っていることにしようとしてしまいかねず、そうなると陰謀論の世界はすぐそこにある。信じすぎることも疑いすぎることも同じくらい怖いことだ。
一番見ていて虚しくなるのはX（旧Twitter）のインプレッション稼ぎという動機でデマを流しているアカウントだ。インプレッション数をあげるために極端にひどいことをわざと言っているアカウントもげんなりするが、バズってるポストをコピペしているだけのアカウントがコピペしたデマをポストしているのを見ると、デマだという認識すらないのだろうなと思うし、ほんとに虚しくて心底寒々しい気分になる。
この原稿で取り上げてきた様々なデマを発信している人のなかにも、一石二鳥の精神でインプレッション稼ぎも目的の一つだったり、インプレッション稼ぎがメインの動機の人間も混じっているのだろうが、それを思うと「なんだかなあ…」という気分でいっぱいだ。
こんな酷い状況の中、ネット上で被災者・被災地を利用しながら、陣取りゲームみたいなことにいそしんだり、悪意で他人をコントロールして面白がったり、インプレッションで小銭稼ぎにはげんでいる連中は現実の人間というものをなんだと思っているのだろう。そこになにがあるというのか。気分は沈むばかりだ。
〈金曜連載〉
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ビートルズと「NewJeansおじさん」：ロマン優光連載259
自分の一番好きなアイドルはTIFに出てない：ロマン優光連載251
あのちゃんについて：ロマン優光連載145
いまだに続く「恒心教」の連鎖：ロマン優光連載254
PROFILE:
ロマン優光（ろまんゆうこう）
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』（Less Than TV）が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』（コアマガジン刊）『音楽家残酷物語』（ひよこ書房刊）などがある。
twitter：@punkuboizz
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