「いえいえ、スパもアロマも付かなくて大丈夫です。店名はほぼ集客に関係ないので自由な発想で好きな店名でいいですよ」
なんと! まさかの自由! これはちょっと本気で趣味に走っちゃいますか。とりあえずロシアの文豪トルストイの代表作からとって店名は「戦争と平和」にしたいと思います。世界文学の最高傑作から店名をいただけば、勝ったも同然でしょう。そう思いませんか? N氏!
「いや、ちょっと重いですね。思想的な感じがするのはちょっと…」
おいおい、あんたが店名は何でもいいって言ったんじゃないですか。舌の根も乾かぬうちに前言撤回ですか。コンサルって言っても適当なものです。
じゃあトルストイがダメなら、同じロシアのドストエフスキーにしますか。ここは無難にドストエフスキーのもうひとつの代表作「カラマーゾフの兄弟」から兄弟を外して「カラマーゾフ」でいきましょう。どうでしょう? N氏。
「カラマーゾフっていうのは、どこか北欧っぽい響きがして上品で悪くないですね。いいと思いますよ」
おいおい! ぜんぜん北欧じゃなくて、ロシアですよ! これだから学のない人は困りますね(注・N氏は、旧帝大卒のエリートです…)。まぁしかし「カラマーゾフ」でいいって言ってるんだから、ここは余計なこと言わずに店名は「カラマーゾフ」で決定にしましょう。
こんなことってあるのでしょうか
しかし店名が決まって数日後、悲劇が訪れることに…。
まさかの物件審査落ち。
48歳にもなって、9万5000円の部屋が借りられないってどうなの? 恥ずかしい、穴があったら入りたいとはこのことですが、そんなこと言っていられません。審査落ちの理由は教えてもらえませんが、冷静に分析してみましょう。
おそらくですが、年収が問題だったに違いありません。我々のようなフリーは確定申告を毎年やるのですが、たいていの人は税金を払いたくないので、経費をガンガン載せて、収入をマイナスにして申告することが一般的です。自分もご多分に漏れず、そうしていたわけですが、そこが審査に引っかかったポイントではないかと。さすがに三井不動産、年間収支が赤字のやつに部屋は貸せないってことですか。48歳の夏、この屈辱は絶対に許しません。
覚えてろよ。三井不動産。いつの日にかメンエスで金持ちになって復讐ですよ。
そんなわけで、次回も物件探しがまだまだ続きます…。
開業と文/野中ツトム(東京 大山&赤塚メンズエステ「ふくらみカルテ」※旧店名「カラマーゾフ」)