こうしたことから、東京都知事選は地方選にもかかわらず「地域をどうする」といった公約ではなく、国政が争点になり、知名度やインパクトも当落を左右するという選挙土壌なのだ。だからこそ、「目立てばいい」「インパクトを与えるために最後の最後に出て話題をさらう」「『風』を読みながら出馬のタイミングをはかる」といった具合に、出馬表明が遅れがちになる。
そんななか、動き出したのは「無党派層にインパクトを与える印象的な言葉やアピール力を持っている」(自民党ベテラン議員)2人の女傑、蓮舫参議院議員(立憲民主党)と小池百合子東京都知事だ。
蓮舫は負ければ衆院へ鞍替え
5月27日に東京都知事選挙への出馬を表明したのは蓮舫氏。記者会見では「反自民政治、非小池都政。私は東京都知事選にこの姿勢で臨みたいと思います」と宣言した。
蓮舫氏の出馬表明は霞が関界隈でも驚きの声が多かったが、立憲民主党の東京都連の衆議院議員はこのタイミングでの出馬表明についてこう語った。
「選挙で戦うには、選挙の論点を自分の優位な方向に他候補よりも先に持っていけるかどうかが大事です。都知事選の大本命である小池知事は、5月29日に都議会で出馬表明すると報道されていました。だからこそ、先手を打って論点を印象付けたかったという狙い。蓮舫さんの巧さです」
蓮舫氏は東京選挙区選出。まさに東京の選挙土壌を知り尽くしている蓮舫氏が争点化をはかったのは、いま国会で大きなヤマを迎え、世論が怒りや不信の沸点に達している自民党の裏金問題、自民党への強烈な批判。小池知事が昨年秋ぐらいから、東京の地方選挙で、その自民党、公明党と連携するケースが多くなり、今回の都知事選も自民党が小池知事を応援する動きが出ていたため、蓮舫氏はここを突いたのだった。
「裏金議員、政治と金の自民党。この自民党政治の延命に手を貸す、小池都政をリセットしてほしい、その先頭に立つのが、私の使命だと感じています」(蓮舫氏が会見で)
「小池知事は国政で批判の的となっている自民党と組むのか!」と、自民党の影が小池知事に見えるように争点化を狙ったのだ。だが、蓮舫氏は「一見、エイヤっと向う見ずに勝負するように見えるが、実はしたたかに計算し、慎重でリアリズムも持ち合わせている」(蓮舫氏に近い立憲民主党参議院議員)という。