楳図かずおのセクシャリティはどういうものだったのか。いわゆる品行方正なジャニー喜多川ではないか、とかアセクシャル(性的欲求や恋愛感情を抱かない人)なのでは、とかいう噂はあったが、おそらく誰も本当のことは知らないだろう。ご本人も愛や憎や性や欲といった俗世間とは別世界の、まるで妖精のような存在感だった。
ただ、吉田豪がインタビューした際に「女性の裸は見たことがないから想像で描いています」とおっしゃったことは事実。あの人形のように美しい女性の顔や身体は性的に興味がない故、純粋に造形物として見ていた結果だったのだ。それはドラァグクイーンなど、私たちゲイが女性の美を解釈する方法に近い気がする。
さらには『赤んぼ少女』『洗礼』『おろち』『イアラ』などの作品に描かれたオネエ成分は強烈だった。美への執着、醜さや老いへの恐怖、女性同士の嫉妬心。いずれもオカマが大好きな養分である。私が小学生の頃に無意識に培われたオネエのかなりを楳図漫画が担っている。美とグロテスク、恐怖と笑いが楳図漫画の真骨頂だが、相反する極端を行き来するのは優れたオネエの必須条件だ。あんまりオネエとばかり言いすぎると角が立つので、ここはクィアネスとでも言い換えようか。
そう。楳図かずおは、LGBTQというよりもまさにクィアという言葉がふさわしい偉人だった。
ジャニー喜多川:サムソン高橋連載1
松本人志:サムソン高橋連載6
大谷翔平:サムソン高橋連載7
頂き女子りりちゃん:サムソン高橋連載8
PROFILE:
サムソン高橋(さむそん・たかはし)
鳥取県出身。ゲイ雑誌『SAMSON』 編集部で編集者およびライターとして勤務し、同社の『SAMSON ViDEO』も制作。2002年に退社。その後はフリーライターとして活動。能町みね子と同棲生活をしている。主な著書に、『世界一周ホモのたび』(ぶんか社)シリーズ。
twitter:@samsontakahashi